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君の名は。のOKのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
4.0
311を忘却したいという欲望がこの映画の真のクリエイターであり、その欲望を受け取るのが俺を含めたほとんどの人間だろう。

映画があえて忘却したのは実際の311であり、天災としての地震は消すことはできない。だから彗星は改変された歴史でも落ちる。しかし人災は防ぐことができる──

その時に媒介となるのはセカイ系的想像力。カタストロフィとティーンエイジャーの恋愛物語のポストモダンな繋がり、つまりまたしても大きな社会や政治を信頼しない想像力がここで駆動される。

そのような意味でおなじくポスト311映画である『シン・ゴジラ』とは対局にある。どっちも作品としては好きだけど、論じるなら断然コッチ。普通の映画なら、フィクションに実際の世界の話を持ってくるなと怒る人が出るだろうが、この映画にそのロジックはさすがに通じない。

都会と田舎、歴史改変、記憶と忘却、差異と反復、片思いの予感と終わり、時空を超えるボーイミーツガール。エンタメとしての完成度は相当高い。これはなかなか批判できない。これを批判するのはイデオロギー批評のお仕事である。
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