ぴのした

君の名は。のぴのしたのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
4.0
はぁ〜〜、すごい映画だなこれ。ストーリーのあるミュージックビデオを見ているみたいだった。

なんかストーリーが先にあるというより、先に「こういうのを撮りたい!」ってシーンがいくつかあって、それを最大限に美しく、また見ている側のテンションがそこで最高潮になるようにストーリーや絵を作ったような印象。

言うまでもないけれど都会の夜景や自然など背景の描き込みの繊細さ、彗星や夕日の光の表現もすごすぎる。一秒間を描くために何人のプロが何十時間かけてるんだろう。こんなの見たことない。

アニメ映画の歴史の映り目を見ている気がした気分だった。ストーリーやメッセージ偏重のジブリや、キャラクターの可愛さ偏重の連続アニメはもう古い。物語の最高潮が訪れるシーンに、ストーリーも映像技術も音楽も最高のものを持ってきて観客のテンションを最高潮に持ってくることに全力を注いでいる印象を受けた。いわゆる「インスタ映え」時代を象徴するような国民的アニメーションとも言えるかもしれない。

しかも単に新しいアニメ映画ってだけではなくて、ストーリーの中核に男女の恋愛の関係性が世界を救うっていういわやる「セカイ系」アニメの遺伝子を継いでいるあたり、アニメの新時代の幕開けを感じる。

この「インスタ映え」世代の映画遺伝子を継いだのがあのカップヌードルのCMの魔女の宅急便やハイジだと思うねんな〜〜。あれは本当に「映え」を狙いすぎて本質が抜け落ちてる感すごいけど。

あと震災を暗にテーマにしたようにも思えたが、それほど深いメッセージ性を盛り込んでいるのかはよくわからない。

ただ、ベタな設定でとっつきやすいのにそれだけにとどまらない盛大などんでん返し、2時間弱の間息もつかせぬ一山二山ある起伏のある展開。味のある脇役に複雑な伏線、観客を置いてきぼりにするような速さの繊細で大胆なカメラワーク。こんなに2時間が短い映画は本当に久しぶり。ひとえに映画製作にかけた製作陣の仕事の熱量のなせる技を感じた。

脚本、監督を務めた新開誠はじめ岩井俊二顔負けの綺麗な映像を作った作画担当、もはやこいつらが主役でしょう…って感じのRADWIMPS提供の書き下ろし映画音楽。。。ほんで主役務める神木くんの声優も侮るなかれ、ただのイケメン俳優ってだけじゃない、ほんとすごく声が合ってて役に適任なんだわ。

これを見る前に、『君の名は。』と比べられて酷評された『打ち上げ花火〜』を見ていたんだが、これが酷評されていた理由がわかった気がした。この『君の名は。』の「プロが1秒のために何十時間もかけて作ったんだな…」感が滲み出る洗練された作画や起伏のあるストーリー展開を見た後だと、あれが高校生の作ったポスターくらいのちゃっちさに思えてくる。

個人的にはストーリー・メッセージ偏重のドロドロしたジブリの方が性に合うんだけど、兎にも角にもこの『君の名は。』、アニメ映画の新時代を見た気がした映画であり、10年に一度の名作であるのは間違いない。