かなり悪いオヤジ

君の名は。のかなり悪いオヤジのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
3.0
『秒速5センチメートル』で新海監督の名前を知った私は、絵がきれいな割にはストーリーが空っぽな内容に愕然とした記憶があるのだが、本長編アニメにはちゃんとしたオチまでついているのでご安心を。

『ディープ・インパクト』な彗星が地球へ大接近中、突如として男女の中味が入れ替わり2人が恋におちる下りは『転校生』。なぜか数日たつと元通り、入れ替り時の記憶さえ『私の頭の中の消しゴム』状態に。けっして巡り会えない2人のすれちがいは『君の名は』というより『イルマーレ』的だ。

この程度のパクリなど、リメイクやオマージュと称して今やどこの国の監督でもやっていることなのでとやかくいうつもりはないが、クリエイターの生命線ともいえる絵コンテの盗用疑惑はちとまずい。

J.J.エイブラムス製作によるハリウッドでの実写化が決まったからといって不倫などして浮かれてばかりはいられない。著作権関係はキッチリ詰めてくるハリウッドからよもや違約金など請求されないよう、今のうちに脇を固めておいた方がいいだろう。

『シンゴジラ』の庵野秀明もそうだが、日本のオタク系アニメクリエーターの描く登場人物にはどうも親近感がわいてこない。薄っぺらな表層だけがLineでつながっているような人間関係はリアルではあるが、映画的ではないのだ。

ヒロイン三葉や奥寺先輩の胸チラやパンチラを散りばめ、オタク君の票田を狙った演出はありだとしても、そもそも三葉とタキ君がどういう性格の高校生なのか説明できる人は皆無に近いだろう。心象風景にはそれなりの配慮が感じられたが、肝心の登場人物の掘り下げ不足感はいかんともしがたい。

評論家岡田某が『ウソはひとつだけじゃないとハリウッドでは子供映画としてみなされる』とか語っていたが、男女の入れ替わりを含め、彗星軌道のウソ、若年性アルツハイマーやタイムスリップの要因、なぜ未来を変えられたのかについてもはっきりしない本作なのに、『実写も当たる』などとなぜ言い切れるのだろうか。