海老

君の名は。の海老のレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
4.8
大好きです。
どこから書けばいいんだろうってくらい。

いろいろあって、ロングラン決定後に遅れて観たんですが、それももう一年半前になります。

僕にとっては、この作品は完璧で、全てが期待を遥かに超えるものでした。
世間で騒がれ、歴史的大ヒットと評され、メディアには持て囃され、いらぬアンチを呼び、と色々ありましたが、それは僕には関係ありません。「僕が」この作品を好きなんです。

物語、音楽、演出、全てが、まさにこの作品を「紡ぐ」糸となっており、こんなにも惹かれたんだろうなと思います。


もはやここを見ている人はほとんど鑑賞済みだと思うのですが、いくらか物語の核心に触れる部分を含みます。


まず、僕は鑑賞前に全く前情報を持っていなかったので、テレビCMの「入れ替わってるー!?」の印象が全てでした。
思えば、このCMの盛大で確信的なミスリードから、既に仕込みは始まっていたようにさえ思います。
使い古された入れ替わり物語かなと油断した状態で見始めたら、いきなり謎めいた、先出しジャンケンな導入で、何やら様子がおかしいと身構えます。今にしたら、よくもまぁ、CMであそこまで主要部分を隠し通したものだなと感心してしまう。

明らかに伏線だと言わんばかりの演出が冒頭から惜しげも無く連発され、そこまで自信があるのか、と一気に食いつきました。

前半の流れは、まだ男女の単純な入れ替わりかのように進みますが、なんなんだろう、これだけで引き込まれる。中だるみを感じない。
映像の綺麗さ、絶妙な間の取り方、シーンの切り替え、耳触りのいい方言、キャラと同化したキャストの演技。
多分どれも必要なんでしょうね。何気ない日常の一つ一つさえ、見逃せない。

物語の転換部分で支えられるRADWINPSの曲の数々も外せない要素として有名でした。曲自体が良いのも勿論なのですが、映像、音楽、物語が互いに活かしあうことがキッチリはまっていたように思います。音楽の盛り上がりにあわせてセリフを抑える部分や、その他の進行において必要以上に音を鳴らさないことで生まれるメリハリ。この緩急と緊張感があって、一層に名曲たちを際立たせられていました。

そして、初見で前情報のなかった僕には衝撃すぎた後半の転換期。
全く予想外だった絶望的な状況に胸が張り裂けそうな想いをしつつも、どこか神秘性を感じてしまうのは、一葉の言葉であったり、ここに至るに語られてきた伏線の数々であったり。とかく、核心に触れた瞬間、ここまでの謎めいたシーンが洪水のようにフラッシュバックし、合点のいった瞬間は電撃が走るほどの衝撃を受けたものです。

クライマックス、圧倒的な自然災害へ立ち向かう姿、宇宙や彗星を描くことで表される荘厳な美しさ、壮絶なスケール、それを彩る音楽。もはや言葉にならないくらいに圧倒される。口が塞がらない。気がついたら、涙が溢れていた。
内容は鮮明に覚えていますが、その時どんなふうに自分が観ていたのかは覚えていません。

そしてラスト。
ここまで綺麗で、期待を上回り、心地のいい余韻を残して締めたことに喝采を送りたい。涙を流しながら笑顔になるような。そんな風に噛みしめている人が多かったのでしょうか。エンドロールが終わるまで、満員の劇場は誰一人席を立ちませんでした。


個人の感想としてではありますが、最高傑作だったと思っています。欲しかったものが全て入っていた。全ての要素が奇跡のように一筋に紡がれていた。

こんな作品を劇場で観れたことに感謝します。
海老

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