教授

君の名は。の教授のレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
-
2016年に記録的(?)大ヒットしたとされる本作。なるべく肯定的に観ようと努力して観た。
何も語れない作品とも言えるし語りどころもある作品とも言えて、正直よくわからない、というのが本音。
これは「大ヒット」というバイアスがかかるからだろう。

新海誠作品は、観客によって賛否が分かれる。特に「否」の側の意見にある「気持ち悪さ」が全開だった。

俎上に上るのは、三葉になった瀧が執拗に三葉の胸を揉む、という部分だが、正直、そこはどうでも良いと思った。
むしろ、そのことに対して言及してそのものズバリをテーマにしていた大林宣彦監督の「転校生」とは対照的で、新海誠はその「性」にまではちっとも言及しない。

ただ、入れ替わったという設定に対して、新海誠が瀧に三葉の胸を揉ませて喜んでる、という視点が気持ち悪いのだと思う。
喚起するシーンは入れても言及しないスケベさが新海作品に通底する「童貞臭さ」であり「気持ち悪さ」なのだと思う。

一時が万事、そんな感じで奥寺先輩の旅館での浴衣姿での寝姿にチラと映る下着姿であったり、本筋に関係のないところでそういうのが挟み込まれるというのが男性である僕でも正直気持ち悪かった。
それは、瀧視点であれば物語として機能するものも、第三者視点、つまりは新海誠視点だから生まれてくる気持ち悪さだからだ。
アニメーションの場合、そこが演出=神の視点になるからこそタチが悪い。
というよりも、アニメとして描かれた女性の肉体への性癖めいたものがチラチラ挟み込まれる描き方はノイズにしかならない。

そしてストーリーに関してはツッコミどころも含めて正直何を言っているのかサッパリわからなかった。
起こっている出来事に関しては、見たままなのだが「転校生」と「時をかける少女」設定の引用はなぜ?と不可解。

比較的、出来事に対して従順過ぎるほどに展開していくストーリーのため、キャラクターの心情が入ってこないので飲み込みづらい。
結局どういうことなのか?を考えているとRADWIMPSの音楽と強引な映像が被さりはぐらかされているような気持ちになる。

何より音楽がまだ流れているのに、被せ気味に説明台詞が入るので、何がなんだか。

とにかく音楽の使い方が巷で言われているようにMV的である、という以上に情緒的、支配的でストーリーの粗を覆い尽くそうと過剰に訴えてくる。
そしてそのリアルで秀逸な作画と情感溢れる音楽はそこそこ魅力的だが、やはりRADWIMPSは歌詞が強すぎて、物語的なカタルシスとは別の方向に振り切れてしまっている。

あと、新宿界隈のロングショットの作画は相変わらず力が入っているが、一方で糸守の山村の作画はのっぺりしていて退屈であり。一時が万事、どこに注視して観て良いのかわからない。

ただ、「言の葉の庭」や「秒速五センチメートル」よりは「よくありがちなシーン」のパッチワークを駆使していて本来の新海誠の童貞感は薄まっていて、「言の葉の庭」や「秒速五センチメートル」で感じた胸焼け感はむしろ解消しているので、その辺りが大衆に許容できるほどのバランスにチューニングされたのだとも思うと、妙に納得できたりもした。

ただ、凄く疲れた。
教授

教授