nagaoKAshunPEi

何者のnagaoKAshunPEiのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
4.0
映画の感想を書く前に、「何者」の原作者朝井リョウについて少し。
早稲田大学在学中に「桐島、部活やめるってよ。」で小説すばる新人賞受賞。「桐島〜」が映画化。東宝に就職(すぐ退職)。「何者」が直木賞受賞。そして映画化。
20代で、文筆家として絵に描いたような成功者となった彼の姿には、感嘆を通り越して、もはや嫉妬すら覚える。
彼の鋭い観察眼から生み出される物語には、比較的、同年代の自分に突き刺さるものがあり、幾度となく登場人物に自分を重ね合わせる。今作でも出てくる、拓人(佐藤健)のどこかわかりきった態度が凄まじくイタいのと同時に、物凄く突きつけられるものがある。
今もこうして、映画を観ては、高みから偉そうに感想を書き連ねていることすら嫌悪感を覚えるし、こうして書いたものが、不特定多数の目にとまり、さらに「いいね」をもらって、誰かに肯定された気分でいることを、俯瞰させられ、自分自身の自己顕示欲をつまびらかにされているようだ。
それだけ、朝井リョウの書く物語は真に迫るものがあり、ある一定の年代に対して深く突き刺さるメッセージを常に残しているのだろう。

ようやく映画の話だが、良くも悪くも原作をこれでもかと丁寧に再現した作品だったと思う。
原作を先に読んでしまっていた分、答え合わせをしているような気持ちで観てしまったが、それでもラストの「見る」「見られる」の視点の逆転は物凄くサスペンスフルに描かれていてよかった。
それと、どこで見ても良いんだけど菅田将暉の演技が素晴らしく良い。監督の演出なのか、それとも菅田自身の原作への理解度なのかわからないが、元カノに対して話しかけるときの声のトーンが、光太郎という人物を見事に体現していたと思う。
若干、ミスリードが上手くいっていないような気もしたけど、演劇と就活を通して、どちらも広義の意味で「演じる」ということをあぶり出し、自分が「何者」であるかを探し出す、意義のある作品だったと思う。
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