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何者のaのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
3.8
「就活」に翻弄される就活生は、傍から見ると、舞台の登場人物に見えるのだろうか。その舞台においても「主役」になれるのは、一握りの学生だけなのだろうか。

履歴書、ES、WEBテスト、筆記試験、グルディス、集団面接、個人面接などを通して、企業様に「自分」をいかに伝える事ができたのだろうか。「自分」の考えや理念、目標に合った企業様に入社できるように、死に物狂いで就活をしていたはずなのに、「自分」を見失ってしまう。一方で、死に物狂いで就活をした事によって、「自分」を見つけられる事もあるのだろう。まさに就活は、自分が「何者」で、「何者」になるのか必死に探し続けた時間だった。

私はメンタル激弱人間なので、彼らのように友達と情報交換は絶対にしなかった。ただ、Twitterで「21卒」を検索し、私だけがダメな学生なわけではないんだと必死に息をしていた(笑)
だからこそ、周りと比較して劣等感や、優越感を感じた彼らの気持ちが痛いほどわかる。そして、就活生同士はもちろん、「夢を追っている」人を見て複雑な気持ちになっているシーンや、有村さんの「…私たちは、そういう所まで来ちゃったんだよ!」という台詞には、首が痛くなるほど何度も頷きながら見てしまった。

ただ、「自分を1分間で表現してください」という質問の答えを、就活生と俳優さんで比較していたシーンが、少し気になってしまった。
就活生は「模範解答」を淡々と語り、俳優さんは「自分の言葉」を感情剥き出しに語っていた。もちろん、涙ながらに自己紹介する就活生はいないだろう。しかし、「自分の言葉」を社会的に評価していただける言い回しに、必死に近づけて語る就活生も少なくないと思う。
「社会的に評価される言葉」が素の自分とは言えないかもしれないが、そのような就活生の努力を透明化してしまうような表現は、元就活生として少し不満に思ってしまった。


ただでさえ、不安で押しつぶされそうなのに、合説や説明会は中止になり、選考は延期になり、「21卒採用見送り」の連絡も来た。また、自粛期間に就活を休止する勇気が私には無かったため、就活を続けた。今考えると、その判断が「正しい」ものだったとは思わない。しかし、その時はそれ以外の選択肢なんて、有って無いようなものだった。
しかし、私は恵まれていたため、サポートしてくださる方は周りに多くいて、幸い就職活動を終わらせる事もできた。

私は「就活」を通して、自分が「何者」か深く考える事ができたため、結果的には、良い経験になったが、もう一度するか?と聞かれても「絶対にしない。」と即答する自信がある。そんな感想まで含めて、私の「就活」はとんだ喜劇だったのかもしれない。この作品を見てそう思った。
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