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何者のkiritoのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
4.0
【アカウント】

好きな作品だけど、レビューは書きずらいなと思った。
就活という活動の中で、自分がどんな人間かを突きつけられる。

自分は企業就活をしたことないが、友達とかは100社とか受けている人もいて、企業就活とはかくも大変なのかと当時思っていた。
まあそういう意味でも、これから就活を迎える人、もしくはいま就活している人はたぶん見ないほうがいいんだろうなという映画でもある。

とはいえ本作は就活というのは物語の土俵に過ぎず、本質はそこにはない。

・「体制に流されるのは嫌だ」「これからの時代は「個」だよ」といい、さも自分には他の人にはない特別な何かを持っていて、会社なんかに就職しないで一人で生きていくと宣う青年。
・有名人や権力者とつながっていてそれをSNSを通じてアピールすることで、さも自分もその人間たちの仲間であると錯覚する青年。
・他者を分析し、客観的に自分はその人間たちとは一線を画していると確信し、周りを見下している青年。
・特に努力もしてないのに、なんだかんだ人生がうまくいっている(ように見える)青年。
この映画には現代の若者(特にSNSに蔓延する)がつまっている。

自分が彼らに対して嫌悪感を抱くのは、ある種同族嫌悪の部分があり、自分のことを映画の中で表現されているからだと気づく。
だからこそ、チクチクとした画鋲の針のような痛みを映画中終始味わうことになる。
特に終盤で二階堂ふみが言い放つセリフに対しては「もうやめてくれ」と心臓がつかまれる気がする。

「他者を大切にしなさい。」という命題は人類に与えられたある種試練のようなものである。それは、人間は結局自分自身が一番大切だから。
特に周りからの評価を気にしがちな若者(ゆとり世代、さとり世代)は、自分を守ることに必死。
自分の思いは伝えたいし、誰かに認めてもらいたい、それでも叩かれるのは嫌だ。そういった自分の心情を「何者」かのアカウントとして擬制させ、代弁をしてもらう。

気づいているけど、みないふりをしている。そんな若者の現状をうまく切り取った映画。

2019.4.24
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