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何者のryoutaのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
3.9
就職活動を舞台にした、現代の課題がつまった作品。

就職をするまでは友達とサークル活動や遊びを通じて好きなことに没頭できる。しかしそれはその場だけの消費であると自ら決めつけてやっている。
就職は自分の熱意や感情を捨ててでも、しなくてはいけない空気感に悩む姿はとてもリアルな光景だった。

そんな状況では、自分の好きなことに熱中して頑張っている人を素直に応援できなくなる。結果がでない人を見下して、「自分はそんなバカな選択はしない」と冷静な分析者であることを理論武装で装う。しかしその批判自体にはなんの価値もなく、ただただ鬱屈した自己が形成されていくだけである。

当事者の時は余裕はないが、いざ俯瞰した視点から眺めると、就職活動とはとても異様な光景である。
終身雇用、年功序列型で成長した時代から、常識のアップデートが出来ずに悩んでいる若者の姿に共感する人は多いのではないか。
小さい頃から周りと同じであることが協調性であると育てられる傾向が多い日本では、自分の本当に好きなことを周りに打ち明けられず、親にも認められず、結局世間体を考慮した上での選択になりがちだ。
その結果、何者でもない自分が形成され、仕事も趣味について本気で考える機会が少ないように感じる。

考えるとリスクや不安は必ず出てくるが、そこから行動して自分の毎日を充実させていくしかない。

当然、雇われていたい人がいてもいいと思うし、どちらにしなきゃいけないという話でなく、自分の生き方をしっかり自分で決めやすい世の中の空気感になっていけばいいと思う。
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