むらみさ

何者のむらみさのレビュー・感想・評価

何者(2016年製作の映画)
3.4
‘じぶん’という不確かなものを、いちいち意識させられてしまうこのSNS時代は本当に生きづらい。
SNSのなかで、発信者は常に人生のメインポジションにいる。
それが見せかけであろうと、素直に表現していようとその人の自由だ。

それをいくら追いかけても、追いかけている‘私自身’はいつまでたってもモブでしかない。

結局のところネットのなかでは誰でも、何者にでもなれてしまう。
第一線から退いた批評家にでも、頑張り続けられる向上心の塊にでも。
リアルな自分との解離を、内側に落とし込み続けながら。自分自身でじぶんを肯定し続ける空しさを抱えながら。
やりたいことを形にすることもできず、裏切られ続けるつらい日々を送るよりもそれは甘美な時間。
精神を磨り減らしながら、ネットのなかの分身は護られ続ける。


映画のなかでは瑞月(有村架純)という、就活2年めの外の自分を見ていたひとが居てくれた。
少しの救いを描くことがフィクションの役割だけれども。
本当(現実)にはどこにもひっかからずに、誰にも気づかれずにそっとリタイアし自死を選択してしまっている人間が居るのだろうなと想像させる、怖くて鮮やかな映画でした。
むらみさ

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