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レッドタートル ある島の物語の一のレビュー・感想・評価

3.8
マイケル・デュドク・ドゥ・ビット監督長編デビュー作

ジブリとしては初となる海外作家の映画製作に参加し、セリフが一切排除されているという異色作

嵐で大海原に放り出されて無人島に漂着した男と、巨大な亀の交流とその先の運命を描く

ジブリ作品でありながら、説明的なものや大衆性は全くと言って良いほど皆無で、極めてアート性の高い美しいアニメーション
とはいえシンプルな物語なので、あまり複雑に考える必要はないかと

これまた独特なタッチで描かれ、絵本の中にある芸術作品のような豊かな表現力に脱帽
セリフがないからこそ、個人の想像を引き出してくれるし、緻密な作画をじっくりと堪能することができる

製作期間8年というのも肯けるほどの、卓越した美しい自然の描き方は圧巻で、もはや余白までもが鳥肌が立つほど美しい

浦島太郎や鶴の恩返しのような寓話的な物語でありながら、しっかりと地に足のついたファンタジー加減も絶妙

なにより、セリフがない分、叫び声や笑い声、波の音や鳥のさえずりなどなど、自然の音までもが圧倒的に美しく、アーティスティックな作品に心地良い彩りを添えてくれる

大衆性とはかけ離れた作品ではありますが、ここまで心を豊かにしてくれる80分間はそうそうないし、桁違いに素晴らしい余韻を残してくれるという置き土産まで

とはいえ、もちろんジブリだから観ようと思った方からしてみれば、なんだこれ?と思ってしまうのも十分に理解はできますが、これほどハイクオリティなアニメーションを、ただ退屈と片づけてしまうのはあまりにも勿体ない

〈 Rotten Tomatoes 🍅93% 🍿81% 〉
〈 IMDb 7.5 / Metascore 86 / Letterboxd 3.8 〉

2021 自宅鑑賞 No.307
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