えんさん

レッドタートル ある島の物語のえんさんのレビュー・感想・評価

1.0
嵐の中、荒れ狂う海に放り出された男が、九死に一生を得てある無人島に辿り着く。必死に島からの脱出を試みるものの、見えない力によって何度も島に引き戻されてしまう。絶望的な状況に置かれた男の前にある日、1人の女が現れるのだが。。「岸辺のふたり」でアカデミー賞短編アニメ賞に輝いたマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットが、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデュースで手掛けた初の長編アニメーション。

スタジオジブリ作品としては、2014年の「思い出のマーニー」以来の作品、、とはいいつつも、同じ2014年夏にジブリの制作部門は解散しており、本作も企画・プロデュース関連のみに参加しているのみで、実質上はフランスのスタジオが製作している別作品といってもいいかもしれません。予告編から、ジブリ色はどこにも感じられないところからも分かる方も多かったことと思いますけどね。宮﨑駿、高畑勲の両監督の引退によって、もうジブリというブランドは消滅したといってもいいかもしれません(共同プロデュース、及び過去のジブリ作品のロイヤリティ管理はしていくと思いますけど)。

ということで、ジブリというメガネを捨てて、全く新しいアニメ映画としても観ても、本作は全く面白くなかった、、というのが僕の印象。あらすじを言ってしまうのとネタバレになってしまうので避けますが、この映画のあらすじはすごい一言で表現できるくらい。それ以外のことは全く何も起きないのです。そのお話の中で、男と謎の女が惹かれ合ってしまうこと自体が、もう僕には理解不能なのです。あとあとから考えると、それはレッドタートルが持つ魔力で、暗喩として、男を惹きつける女の魅力というのが、島の不思議な魔力と結びつくのかもしれないですが、それでもどう考えてもおかしいでしょ、、とツッコミを入れる展開になってしまうのがどうかと。。思えば同様の展開は、日本の古い昔話の中でもよく登場するのですが、そうしたおとぎ話に昇華できるような作品の色合いにもなっていなかったと思います。

じゃあアニメとして面白い画作りがあったかと言われると、それも疑問符。予告編でも見られる、夢の中で空中に浮き上がっていくシーンが唯一の見せ場かな。あとは、全体の絵がシンプル過ぎて、洪水のシーンとかも、何か迫ってくるようなダイナミックさに欠けます。この画力で、スクリーンで1時間30分弱のスケールで見ることを強いるのも辛いところ。やはり、この物語や絵のスケールなら短編くらいがせいぜいいいところではないかと思います。何もかも力弱いところがすごく気になる作品に映ってしまいました。