TAK44マグナム

パラドクスのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

パラドクス(2014年製作の映画)
4.1
どこまで行っても無限ループ!


「ダークレイン」の鬼才アイザック・エズバン監督作。
「ダークレイン」とも同じ世界観を持つ、やはり一筋縄ではいかないSFスリラーです。


刑事に追われる兄弟。
非常階段を1階まで降りるとドアが無い。
更に下へとのびる階段を降りると、そこは9階・・・
三人は、決して抜け出すことの出来ない空間に閉じ込められたことを知ります。
何故か自動販売機の食べ物や飲料水は無くなると補充されるため餓死は免れても、刑事に撃たれた兄は衰弱し、ついに弟は刑事に銃を突きつけます。
一方、ある4人家族が旅行に出掛けます。
一本道をクルマで走っていると、アクシデントから喘息持ちの妹の吸入器が壊れてしまいます。
仕方なく家へ戻ろうとUターンしますが、また同じ場所へと戻ってしまうのでした。
一本道から抜け出せなくなった家族を絶望感が襲います。
何故か無人のガソリンスタンドには食料品が補充され、何時間たっても夜は永遠に来ない・・・
はたして、彼らは元の世界へと戻れるのでしょうか・・・?


う〜ん、これは真相をネタバレ前に暴くのは、かなり難しいのではないでしょうか。
それほど突拍子もない。
「ダークレイン」も突飛なアイデアで翻弄してくれましたが、本作もまさしく奇想天外。
ネタが分かったあとでも霧に包まれたような感じです。
なんと言うか、例えるなら「起きているためには寝る必要がある」、または「太陽に対する月」といったところでしょうかね?

真相については、かなり極端な考え方なので、「ああ、なるほど!」と素直に頷けるものではないような気もします。
人生を70年として、半分ずつで陰陽を分けるなんて、そんな単純なものではないでしょうに(汗)。
「未来がある者」と「終わりへ向かっている者」の二者を残り時間で分け隔ててしまうのは、それって結構恐ろしい思想じゃないですかね。
アイザック・エズバン独特の思想なのかどうか分かりませんが、「ダークレイン」で呈示された「黒幕(?)」なら、こんなバカなシステムを構築してもおかしくはないですけれどね。

何度か登場するエスカレーターを無限に降り続ける花嫁姿のお婆さんはループを断ち切ったという事なのでしょうか?
35年間の苦しみ、そして孤独に抗うことなんてそうそう出来そうもありませんが、花嫁衣裳のままてあったことから、ループを断ち切った可能性が高いと思いました。
しかしながら、世界中いたるところで同じ無限世界が繰り返されている可能性は否定できません。 
「ダークレイン」が誰もが気づかないうちに全人類が大変なことになっている話であるなら、「パラドクス」もまた然り。
誰もがみんな、実はぐるぐる回り続けるネズミなのかもしれません・・・。


最後にひとつ。
「ダークレイン」のDVDはジャケ絵詐欺でしたけれど、本作もジャケ絵にあるスクリーマー女子なんて何処にも登場しません。
アイザック・エズバン作だと出てこないヤツをジャケ絵に描けっていうキマリでもあるのでしょうか(苦笑)?


レンタルDVDにて