マクガフィン

KUBO/クボ 二本の弦の秘密のマクガフィンのレビュー・感想・評価

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016年製作の映画)
3.7
中世の日本を舞台に、魔法の三味線と折り紙を操る勇敢で心やさしい片目の少年が出自の冒険を描くストップモーション・アニメで、闇の魔物たちに追われた少年がサルとクワガタをお供にして、敵と戦うために必要な3つの武器を探す旅へ出る。

最近、テーマに対しての下調べが足りない映画や、漫画や小説の原作リスペクトを感じない実写映画を多く見ているのだが、この作品は日本への愛情が溢れ世界観や造形に違和感が少ないことに好感。製作側がかなり日本文化を勉強したことが伺えることが非常に心地よい。

なんといっても素晴らしいのが映像美で、人形を1コマずつ動かして作り上げた繊細な映像のストップモーション・アニメ技法は、人の微妙な表情や体の細かな流麗な動きにリアルティがあり、生きているような温かみを感じる。
また、変幻自在に舞う幻想的な折り紙の動きと色彩の美しさは素晴らしく、観衆をおとぎ話の世界に導く。
更に、葛飾北斎の風景画や歌川国芳の鰐鮫や船などの浮世絵に命を吹き込んだように動く背景や造形の色彩美の独自の画面構成センスも秀逸で、ストップモーション・アニメ技法独自の表現は驚くほど美しく、今後はアニメやCG技法の製作者が勉強や参考することになる完成レベルに。

次第に分かるサルの説教じみた会話が母性を表し、クワガタに父性を表す家族ファンタジーでもあり、サルとクワガタ反発しながらも導かれるように心が寄り添うシーンや損得勘定抜きに3人がお互いを助ける姿に家族愛を感じて納得。平行して3つの武器を探すことはドラクエのようなRPG世界も取り入れて楽しい。
真相を知ってからの2回目の鑑賞は、会話や行動の解釈が変わる物語なのでリピートしたい。

北斎が読本に新機軸をもたらしたかのように、この映画もストップモーション・アニメで和風を軸とする新日本昔話を創造し、物語と人物造形と背景にも思想や生命などを結合したような繊細で雄大なおとぎ話に日本人として感銘を受ける。