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KUBO/クボ 二本の弦の秘密のdeenityのレビュー・感想・評価

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016年製作の映画)
4.5
ストップモーションアニメ作品の『犬ヶ島』を見てその帰りにレンタルショップに行くと、これまた見たかった本作がレンタル開始されているじゃないですか。新作でしたが迷わず借りてしまいました。

先日のレビューでも触れましたが、私がストップモーションアニメにハマったきっかけになったスタジオライカ制作による作品です。
ライカの作品は一週間に3秒程度しか作れないほどの手間のかかる作業と、VFX演出による自然さ・リアルさが魅力だと思っています。だからこそ生み出せる独自の味がいいんですよね。

そしてウェスもそうでしたが、日本文化を取り入れてくれる所もまた粋ですよね。三味線とか折り紙なんてのはもちろん、街並み、服装、風習など、時代の誤差はあるでしょうが、そもそも日本人自体がそういうことを忘れつつあるのですから、「学ぶ」というよりは「味わう」スタンスで鑑賞するだけで良いと思います。

ただ、私がアニメーション映画に求めるものは、「子供に見せるのに適しているか」なんですよね。子どもはきっと作品のメッセージとか主題とか、そんな難しいことは考えずに見ると思うのですが、その作品を見たときにどう感じるか、ってすごく大事なことだと思っていて、楽しいとか面白いとか悲しいとか怖いとか切ないとか…。その作品を見たことによる心の動きが何か子どもたちの心に残っていくんだと思うのです。
本作において言えば怖いとか悲しいとか、そう感じる子が多いとは思うんですけど、大人よりもそういう繊細な感覚をどのように「味わう」かが最も大切なポイントだと思っています。

その上で、この作品が最後に起こす心の揺らぎが何よりも素晴らしいと思います。月の帝が記憶を失い、一切何も覚えていない状態になった時、罰を与えるのではなく、許しを与えたこと。その方法が、記憶を物語るという、まさに物語の持つ最高のメッセージそのものであること。
アニメーション然り、寓話然り、絵本やら小説やら、そういう物語の類い全てと関わることで、何かを学び、何かを感じていく。多くの物語によって人は形成されていく。多くの幸せな物語によって人の心は豊かになっていく。『リメンバー・ミー』ではないが、亡くなった人は語り継ぐことで行き続けることができる、なんてメッセージもあるにはあって、そういうメッセージはわからないまでも、例えば夏休みの教育テレビなんかでこの作品を放送して、「怖い悲しい」って思いながらも最後には「面白かった」と思ってもらえるだけでこの作品を見る価値はあるだろうと思います。
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