NinaSinnerman

ホームレス ニューヨークと寝た男のNinaSinnermanのレビュー・感想・評価

3.8
Mark Reay (マーク・レイ)。
この人の存在自体がアート。

整った目鼻に、寒波や紫外線で荒れた肌。
立派な体躯に、仕立ての良さげなくたびれた服。
突飛な設定に興味を惹かれ思わず見てしまうようなヒューマンドラマを地でいく男。
詩の一節か、映画の台詞みたいな言葉が、彼の口からポトポトこぼれる。

NYの街並みや往き交う人々、ビルの狭間の屋上から眺める空や雲、レンガの壁にコンクリートの剥げた床。

彼の寝てる屋上で、自分への失望や葛藤を戯けて語る彼の後ろには"Ego Sensation"と落書きが。

全編がジャズで彩られているけれど、NYってどうしてどこを切り取ってもこんなにジャズが似合うんだろう。

ファッション/エンタメ界という資本主義と虚構の集大成として君臨し続ける街のど真ん中と片隅を往復し、底辺生活を晒してなおフォトジェニックな男のストリートライフ。
彼の存在や行動の積み重ねの全てがアート。
完成されたアートに良し悪しはなく、実は意味を持つ必要もない。(モデルに知性は必要とされない、というのはこのあたりで納得する。)
アートとなった彼が必要とするのはそのアートを展示できる場所と、彼を観て愛でてくれる人間。

いつの時代も矛盾と葛藤はスリリングなアートであり、他人のそれを観覧するのは俗物的なアミューズメントでもある。
でも本人は生きた人間、イケメンでも52歳。
感情も記憶もあるのが当たり前だけど切ない。
でもそれだからこそアートとして成立してしまう。

2014年公開だけど、その後どうなってることかものすごく気になる。
NinaSinnerman

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