こたつむり

神様メールのこたつむりのレビュー・感想・評価

神様メール(2015年製作の映画)
4.0
★ 澄んだ空の日、あなたの瞳に花束を

神様は中年の男性。
マンションの一室で妻と娘を軟禁し、パソコンに向かって「世の中を不幸にしてやる。うけけけけ」…ってどんな妄想ですか?と思わず突っ込みたくなる序盤。

現実なのか、妄想なのか。
本気なのか、冗談なのか。
綱渡りのように境界線の上をゆらゆらと揺れる物語。

だけど、とても素敵な作品でした。
ベルギーの映画だからかフランス語…というのも浮遊感が増して良い雰囲気。こそばゆく感じるほどに手触りが優しいのです。

また、そんな優しさとは裏腹に。
物語の奥底に仕込まれた毒(ポワゾン)が良いアクセント。ぬるま湯の世界観ではないからこそ、些細な“幸せ”がじんわりと沁み入るのでしょう。

そして、その毒を担うのが《神様》とは皮肉的。うん。本当に嫌な奴なのですよ。確かに現実を見渡しても肩が下がることばかりですからね。実際に《神様》が居たとしたら、こんな嫌な奴に違いありません。

ただ、救われるのは主人公が《神様》ではなく、その《娘》であること。10歳くらいの可愛らしい女の子が《神様》に反抗していく展開なのです。そして、その手段は親に似て過激的。全人類に“余命を知らせる”という真にメイド・イン・ヘブン。

だから、大切なのは“覚悟”でした。
新しい世界を切り拓くのも。
愛しい誰かに想いを告げるのも。
自分の意思が重要なのです。

まあ、そんなわけで。
センスの塊のような物語なので人を選びますが、日常に潤いが足りない…なんてときにはピッタリの作品。ただ、ベルギーのお国柄か、性的な場面が多いので子供と一緒に観るのは相応しくないかも。

最後に余談として。
ネットで検索したら本作の邦題について言及した記事がありました(『月間SPA』)。確かに邦題をつけるのは難しいと思います。でも、タイトルって製作者の想いを端的に伝える大切なもの。たとえ堅苦しくても“原題”に沿うことが重要だと思います。
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