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神様メールのkomoのレビュー・感想・評価

神様メール(2015年製作の映画)
4.2
10歳のエア(ピリ・グロワーヌ)は、『神様』の娘として生まれた女の子。神様の正体はブリュッセルに住む中年男で、毎日パソコンで人間たちの動向を眺めている。
人間を造ったのも神様、人間たちに戦争を始めさせたのも神様、そして『パンを落とすとジャムを塗った面が必ず床側に来る』などといった意地悪な法則を作ったのも、この神様だった。
そんな父の傲慢さに怒りを覚えたエアはこっそり行動を起こした。父のPCを使い、人間たちにそれぞれの寿命を知らせるメールを送ったのだ。自分が死ぬ日を知ってしまった人々はパニックに陥り、それによって世界が変わってゆく。その事実を知った神様は大激怒。
エアは横暴な神から世界を救うべく、運命を変える力を持つ『6人の使徒』に逢うため旅に出た。


既視感が全くなく、説明も難しい世界観。映画のジャンルとしてはブラック・コメディに当たるようです。
聖書の内容がかなり皮肉的にパロディされていて、更にはかつての聖書を塗り替えて新しい聖書を作ってしまおうというのだから、かなり過激で挑戦的な作品だという印象を受けました。けれどヨーロッパでヒットしたそうなのでびっくりです。

それでもコメディとして落とし込むための趣向があらゆる面で凝らされているのを感じ、観ていてなんとなく心地良かったです。6人の使徒たちの個別の物語も、世界観との絡ませ方が見事でした。
なおエピソードの大半が性にまつわる話なので、家族との鑑賞にはまったく向きません(^^;

使徒たちのエピソードの中ではオーレリーの話が一番好き。左手だけがダンスをする映像がすごく好きです。この映像に出会えただけでもこの映画を選んだ甲斐があったと感じるくらい。
そしてまさか、ドヌーヴ様とゴリラさんのツーショットを拝む日が来るとは思わなかった。

最初から最後まで非常に情報量が多い物語ですが、驚くべき形で収束します。
でもここまで風呂敷を広げた後では、あの終わり方がまさに真理であるような気がしてしまう。世界とはきっと、こうやって突然変化するものなんだなと。
そしてどうせこんな風に変わってしまうなら、今を精一杯生きようと学ばされる部分がありました。

エアは出逢った人の音楽を感じ取る力があり、使徒たちにその曲を教えてあげる務めを果たしていました。それらの多くは格調の高い楽曲でしたが、それに反してEDテーマは等身大の女の子の気持ちを歌ったポップスでした。
この壮大な映画の重要テーマは案外、『小さな世界の小さな反抗』で、『誰にでもできるよ』とメッセージだったりするのかもしれません。
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