Mayuzumi

黄金バットのMayuzumiのレビュー・感想・評価

黄金バット(1966年製作の映画)
2.8
 特撮ヒーローもののなかでも黎明期にあたるこの映画が、今尚エキセントリックであるのには理由がある。ヒーローが骸骨なのである。そんなヒーローに助けられたい人がいるだろうか、というのが大衆側の率直な代弁であるだろう。彼はいつも笑っている。「助けて黄金バット」の声に勇躍駆けつけた彼はとりあえずガッハッハと笑うのである。君はいったいヒーローなのか悪役なのかはっきりしたまえと問いたくなってくる。ところが、彼が我々の前に最初に姿を見せたとき、彼は善でも悪でもなくただの死体だったのである。ヒーローが死体で出てくるなんて前代未聞である。
 筋は単純明快で、ナゾーと名乗る宇宙人が惑星イカロスの軌道を変化させて地球への衝突を目論んでいることが分かり、髭面千葉真一率いる国連秘密機関パール研究所の一員は、イカロス破壊を目的に製作された、超破壊光線砲の完成に必要な特殊レンズの原石を捜しに、一路、謎の孤島アトランタスへ向かったのだが、時すでに遅く、島はナゾーの一味に侵略されていた、というものである。その島の地下にあった棺に、死体のヒーローが入っていたのだけれども、棺には水を垂らしたら蘇ると書いてあったので、パール博士の孫娘のエミリーちゃんにやってもらい、するとヒーローは彼女に、呼んでくれたらいつでも駆けつけると約束して金色のコウモリを授けるのである。ピンチのエミリーちゃんがいざ黄金バットを呼ぶや、すかさず彼女の背中に万全待機していたコウモリが飛び立って骸骨を呼んできてくれるというのが、彼の用意した手品の全貌であったが、あんた、それって二度手間ではないでしょうか。その上コウモリの動きがもう遅っそい遅っそいのである。それで不細工な敵にコウモリを捕まえられてもう黄金バット呼べねえな、といった事態に陥る始末である。
 しかしヒーローはいつだって空へ飛び去っていくが、彼の帰る場所がどこにあるのか誰も知らないのである。たったこの為だけに蘇ってきて、しかし一度危機が去れば、死人である黄金バットの存在する場所などこの世に何処にもなかった。彼は帰るのではなく死ぬために空へ去ったのだと考えるならば、ヒーローの存在意義なんて結局政治的な問題に過ぎなくなるだろう。
 ちなみに、私はこの映画のタイトルをきいて最初に浮かんだのは、あの煙草の銘柄である。だから、黄金バットは死に場所を見つけに行ったのではなく、ただ喫煙所を探しに出かけただけなのかも知れませんな。