茶一郎

クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃の茶一郎のレビュー・感想・評価

3.8
『 好きなもの見ていいじゃない。夢の中なんだから 』

 ひろしが会社ヒーローに!みさえがホスト狂わせに!しんちゃんがナナコお姉さんとイチャイチャしている!
『夢』から始まり、これからの『夢』で終わる『夢』についての映画。
 荒廃した街の中を泳ぎ回る巨大な魚の中は、『ピュアハートを持つ者』だけが住むことのできるユメミーワールド、そこでは良い夢を見ることが許され、荒廃した街は悪夢の世界だった。そんな「インセプション」のような設定の今作は、クレしん劇場映画第24弾。

 『子供も大人も楽しめる』そのクレしん映画の優れた点がより際立つ。一家でキレキレなギャグに爆笑、子供は楽しい自由な夢を想像して、大人は悪夢を払いのける母の姿に泣かされる。ファミリームービーとして素晴らしい作りであり、コメディ邦画最後の砦のような貫禄さえ感じた。今年もクレしんは間違いない!
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 大人になるにつれてどんどんと少なくなっていく可能性、希望、そして夢。夢のエネルギー:ユメルギーが少ない大人たちだけがユメミーワールドを追い出され、悪夢を見続ける。クレしん映画十八番の、大人だけが巻き込まれる奇妙な現象から、大人と子供との対比が浮き彫りになる。

  『大人と子供』と書いたが、今作は大人と子供、野原一家とカスカベ防衛隊の活躍を二つの世界で描くことでどちらもしっかりとした見せ場がある。
冒頭は、子ども(吉夢の世界)VS大人(悪夢の世界)という構図から、後半は子ども(悪夢の世界)VS大人(吉夢の世界)に変化するストーリー展開がとても面白いと思った。
悪夢の描写は、大人もギョッとするくらい怖く、この怖さもクレしん映画の醍醐味だなあと。もちろん、突き抜けてくだらないゲスト出演も。

 誰しもあるような自分の過去のトラウマを克服することで、ようやく前に進むことのできたある登場人物の姿から、夢は見るものなのだとハッと気付く。
日常に戻り、今まで見ていた『夢』とは違う、子どもが見る将来の可能性、希望としての『夢』の輪郭がそこにあった。
茶一郎

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