タマル

クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃のタマルのレビュー・感想・評価

1.8
なんでこの映画がこんな評価高いかわからん。
しかも『3分ポッキリ』の評価はこれよりはるかに低いという。何事だね、これは。

まず、転入生が来るってとこまではいいよ。ただ、その転入生の悩みを解決するのが物語の主眼ていうのは、どうなん? で、転入生がまた転入して映画も終了? ベタすぎだろ。3億回見たわ、その構造。
テレビアニメが映画化する際の鉄板だよね。なぜなら、主要キャラクターの誰も成長させずにすんで、テレビ版との齟齬が出ないから。
およそそういう事情を介さない野心的な作風が、クレしん映画の魅力だという点はコンセンサスが取れてたはずなんだが、いつからその前提が崩れたの?

あと、ユメミーワールドの世界観なんだけど、まず「夢ってそういうことなの?」というそもそものツッコミどころは置いておくとしよう。ただ、大人は夢力が小さくて、子供は大きい、みたいなのは安易すぎだべ。大人は夢を見なくなったわけじゃなく、夢に見るようなことが実態として理解できるようになるから、自分にとって現実的な(経験に即した)何かを夢見るようになるだけ。その「大人は夢がない」みたいのは子供がなんとなく大人に抱くイメージでしょ。
作る方まで子供になってどうすんの??

それにも通じるとこだけど、設定が適当すぎ。「子供の心を取り戻せば夢力が戻る」みたいの、本当に大の大人が考えたことか?
「子供=純粋」みたいな図式性は、特に本作みたいにトラウマを持った複雑な子供が中心の話ではダメでしょ。そういえば、あのひねたガキは周囲に心を閉ざしてる設定だったけど、結局あっさりなびいたわね。 そういう心変わりを説得力持って描くのは、かなり脚本家の力を要するけど、当該作品の脚本家にその腕はなかったみたい。
で、あのひねたガキの悪夢に入れる理由も全く謎だね。勢い?
何であれ、クレしん映画は馬鹿らしい理由でも「そうなる根拠」をちゃんと示す矜持は持ってたんだけど、ついに「子供には科学を超えた不思議な力が」とかやり出しちゃった。スピ系に走ったらクレしんも終わりだわ。お疲れさん。

最後に、みさえがアホみたくスピーチするラストがあるよね。

「親にとって子供ってのは自分以上なの!!」
「それが母親ってものなの…
あなたを憎むわけない…!」

あぁぁテーマをそのまま言っちゃったぁぁぁ。皆んなからボロクソ言われてる『3分ポッキリ』すら、みさえグリグリしながらのスピーチていう演出上の工夫もあったのに、今回はたっっぷり間をとってテーマを言っちゃいました。
この90分ぜーんぶ無駄だったね。
このシーンだけ見れば、この映画が言いたいことは伝わるんだから。省エネ結構。いやー素晴らしい。

ま、これは今ヒロインの夢空間てことだから仕方ないかもしれないけど、悪夢の発想がすごい貧困(いい夢もだけど)。例えば、春日部防衛隊を悪夢が追いかけるシーンだけど、番犬、ワニ、剣、暴走族ってさ。もっとパーソナルな領域に切り込むような、それを他人に見られることすら傷つくような、そんな悪夢が考えられたでしょ。やる気なさすぎ。
何れにしても、本作を観て、あぁクレしんは本当の「子供向け映画」に成り下がってしまったのだなぁとがっかりした次第。 この辺りでクレしんシリーズを見るのはやめておきましょう。
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