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海よりもまだ深くのTaulのレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
4.0
『海よりもまだ深く』鑑賞。共感と涙。是枝監督の阿部"良多"寛ものは個人的な思いが重なり過ぎる。地味でアレな極上の味わい。ダメ男に苦笑いしながら台詞の数々が染み渡る。国民的団地映画。

『海よりもまだ深く』珠玉の「台詞の映画」。2回目で気付いたとこもあったが恐ろしいくらいに全ての台詞が意味を持ちかつ繋がっている。ふっと出た言葉で分かる登場人物の生き様や人生の本質のオンパレード。上手すぎてちょっと鼻に付くくらいだ。是枝脚本がピークにあるのを感じた。

『海よりもまだ深く』画面の隅々や後ろの音も味わう。団地の生活や今の日本のアルアルがいっぱいだ。カメラはその狭さを狭いままにじっくりと撮る。時折心境に合わせアップで抜く時がポイント。市井の人の切ない表情の数々。なりたかった自分でなくても今を生きてる人たちを優しく見つめるようだ。

『海よりもまだ深く』ダメ男と金の話に成瀬巳喜男の、テレビっぽい粋な会話劇に昭和後期ホームドラマの雰囲気も。ただそれらは是枝節に昇華されてて初期のような模倣は感じない。それよりやはりこの作品の特長は監督の私的な想いに満ちてることだろう。ファンとしてはそれも含め愛おしい映画になった。
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