働かず幻想ばかり見るようになった彼氏と、自分を高校のときから好きだった男性。二人の間を空虚な心境のままひたすら行き来する8月後半の何も起こらない物語を、ここまで痛々しく、充実して描けることに驚く。
好きでもない男と愛がだらけた彼氏に対して惰性で付き合う主人公の、悲痛さと理想の愛を求めてさ迷いつつも日常をずるずると生きる姿は我々の鏡のようでドキッとさせられる。そして時折見せる彼女の妄想シーンや本音の台詞の数々に、現実と理想のギャップを埋められない心の生の叫びが伝わる。
決まっている台詞の数々も素晴らしく、中でも好きでもなかったがつきあっていた男に言う「あなたのことがどうでもいいからワガママ言えるんだよ」は共感せずにはいられなかった。
地獄のようなラストにも関わらず、彼氏に対して素直に笑う主人公の姿に生への覚悟と希望が感じられ痺れてしまう。
主人公の女性を演じる池田夏海は確かに素人丸出しの演技だが、段々とヘタウマに感じられてこれはこれでいいという気分になってくる。そして池田氏が演技を超えて発していた現実的な実感のこもった感情のオーラが、いつしか映画に生の空気を持ち込みそれが独特の魅力と化していく。プロの役者による演技論やパターンの演技とは違った映画の世界がここにある。
エンディングの曲も作品の余韻とはまっていてくせになる。