垂直落下式サミング

ザ・ハロウ 侵蝕の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ザ・ハロウ 侵蝕(2015年製作の映画)
3.9
地元民から神聖視されている不気味な森を調査するために引っ越してきた男とその家族が、森に棲む生血をもとめてさまよう怪物たちに命を脅かされる恐怖を描くイギリス・アイルランド産のホラー。
サンダンス映画祭で絶賛とのことで、これは非ハリウッドからの良作の誕生か?いや単にそこらのホラーバカが騒いでるだけか?と疑心暗鬼でみてみたのだけど、たしかに目の肥えた映画好きを唸らせる部分があるのはわかる。怪物の造形などは安っぽいのに、暗闇のなかを上手く動かして作り物っぽさを感じさせない手腕はお見事だ。
ロケーションの雰囲気も、まさに「いにしえの森」といった感じで、神に選ばれなかった魔物や妖魔の住み処としての、終末的な雰囲気が立ち込めている。暗い森の中からじわじわとハロウたちが迫ってくるシーンは必見だ。
「怪物に噛まれ病原体に触れると感染する」新世紀の吸血鬼要素は、ゾンビなどで昨今供給過多であるため食傷気味なのは否めないが、子供を守ろうとする両親の心の有り様と、意思もなくただ触れたものにとりつき侵蝕し続けるハロウの関係が、後半に行くにつれてリンクし対をなしてゆくという、何気に巧みな構成の物語である。
しかし、何やら黒いものがどろどろと汚く広がってゆく気持ち悪い描写で、自然の神秘性を気色悪いグロテスクさを全快にして見せていくため、メインテーマであるはずの森林伐採への警鐘は頭に入ってこない。社会批評っぽいことを入れ込んではいるが、本質は低俗なゲテモノ映画であり、至極真っ当な清い姿勢の作品といえる。
とりあえず、『死霊館』シリーズのスピンオフでお手並み拝見となるコリン・ハーディ監督の名前を覚えておこう。ホラーファンの青田買い作品と言ったところか。