小波norisuke

太陽のめざめの小波norisukeのレビュー・感想・評価

太陽のめざめ(2015年製作の映画)
4.0
観終わって、「太陽のめざめ」という邦題は映画の内容にふさわしいすてきなタイトルだと思ったが、気になって原題を調べてみたら、「後頭部」という意味のようだ。よく思うことなのだが、外国映画のタイトルは、なんてシンプルで端的なのかと、またも感嘆してしまった。確かに後頭部が印象に残る映画なのだ。

自分もたいがいどうしようもない人間だと思っているが、この映画の主人公である少年マロニーも、その母親も、かなりどうしようもない人々だと思う。親による養育が行き届かない環境で育ったマロニーは、思春期を迎えてもこらえ性がなく、すぐに感情を爆発させてしまう。マロニーは、そんな自分自身に絶望しそうになりながら、必死に抗い、何とか変わりたいともがいている。マロニーの心の中の葛藤が、凄まじい緊迫感を生み、呼吸するのを忘れそうだ。

マロニーは誰に対しても反抗的な態度をとるが、彼が愛情に渇えていることは、彼の全身から滲み出ている。だからこそ、マロニーは人を惹きつけ、大人たちは何とか彼の力になりたいと手を差し延べる。しかし、大人たちの思いは裏切られてばかりだ。

そんな大人の一人である、カトリーヌ・ドヌーブ演じる判事は、マロニーのどんな振る舞いにも毅然と向き合い、彼にとっての最善策を思案する。貫禄を感じさせるドヌーブの存在が、とても頼もしく、私もこの人にすがりたくなる。

新人賞を総なめにしたというロッド・バラドの演技が素晴らしい。主人公マロニーの愛情に餓えている様子は、グサヴィエ・ドランの「Mommy」や、ドランが演じた「エレファント・ソング」を連想させる。

どうしようもない自分に辟易しながら、私も、もがこう。そして、願わくば、いつか誰かにとっての、ドヌーブが演じた判事のような、あるいは自分自身ももがきながらマロニーに寄り添う教育係ヤンのような存在になりたい。

それにしても、シネスイッチ銀座さんの初日来場者プレゼントがマロニーって、斬新じゃないかしらん。
小波norisuke

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