アーリー

ダンケルクのアーリーのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.2
ノーラン監督の戦争映画。
日本では全然馴染みのない「ダンケルクの戦い」を実写化。ヨーロッパでは有名なのか。

セリフがほとんどない。映像と音楽、役者の表情で話を進めていく。戦争映画というよりは戦争ドキュメンタリーに近いのかな。味方がいて、敵がいて、ライバルがいて、みたいな分かりやすい構図じゃない。今作の敵はドイツ軍やけど、まったく描写されない。いつ襲われるのか、いつ死ぬのかわからないという恐怖感がずっとある。兵士たちが感じてる恐怖をセリフじゃなくて表情で分からせる技量。本当に凄い。

今作も時系列がバラバラ。というか陸、海、空の異なる視点を交互?に見せていく。ラストで3つの時間軸が交錯する。最初は時間のズレに気づかんかったけど、ちょくちょくクロスする時があって途中ぐらいからやっと気づいた。映画の演出的に盛り上がるタイミングが合うのが観ていて気持ちいい。戦争という題材でしかも本当にあった出来事やから、こういうことを言うのはちょっと不謹慎かも知らんけど。

33万人を救出したというのは本当に凄いことやけど、その裏では儚い犠牲もある。それを美化しすぎることもなく、淡々と事実のみを突きつけられる感じが今作にはある。新聞には、ダンケルクの戦いはある意味勝利だと書かれていて、帰ってきた兵士たちは市民からの熱い歓迎を受ける。そのこともプロパガンダ的な匂いがあって、今の自分には違和感が残る。命令を受けて送り出され、追い詰められた時に軍は助けを出さない。民間船を徴用し、戦場に送る。武装も何もないのに、愛国心を焚き付けて戦地に送る。結果的に成功したけど、かなり危険なことのはず。けどもし失敗していても軍や政府はいいこと並べて美談にするんやろうなという恐怖が残る。映画のラストシーン、主人公が見せた表情はそれを物語ってるように見えた。
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