第二次世界大戦初期の1940年。連合国はフランスのダンケルク海岸でドイツ軍に包囲され、ダイナモ作戦による撤退を余儀なくされていた。イギリス陸軍兵士のトミーは自身の分隊が全滅し、ダンケルクの砂浜にやってきたところで無口な兵士と出会い、共に行動するようになる。民間船徴用により自身の船を出すことになったドーソンは息子のピーターとその知り合いであるジョージと共にダンケルク目指して出港する。イギリス空軍のパイロットであるファリアやコリンズは戦闘機で連合国軍の撤退を妨げるドイツ空軍と空中戦に臨む。
クリストファー・ノーラン監督がダンケルクの戦いでのダイナモ作戦を3つの視点で描く。第90回アカデミー賞において、作品賞をはじめとする8部門にノミネートされ、結果として編集賞、録音賞、音響編集賞を受賞した。
クリストファー・ノーランが描く戦争映画ってどうなるのか と思って観ましたが、なるほど、そっち系か。非常に淡々としている作風で、視覚や聴覚から感じるパワーがハンパなかったです。セリフもかなり少なくて、脚本という部分はほとんどないようなものではないかと思いました。それでもノーランが魅せ方が素晴らしく、リアリズムとダイナミズムが見事に共存していたと思います。
だからと言って、ストーリー展開がおもしろくない訳ではありません。ピンチから始まり、死と常に隣り合わせ という緊張状態。そこから終盤にかけて、希望が見えてくる展開は高揚感がありました。なんとか生き抜こうとする人々の思いが実を結ぶ。自身を顧みないで他を助けようとする人々の思い。これらには胸がアツくなっちゃいます。ケネス・ブラナーやトム・ハーディがめちゃくちゃカッコよかったです。
陸の1週間、海の1日、空の1時間。それぞれ時間の進み方が違い、終盤になるに連れて、リンクしていきます。ここはノーランらしいギミックでしたね。
セリフを省き、映像や音で魅せるノーランの手法。迫力満点で非常に没入感がありました。戦争という絶望の中を駆け抜ける人々の姿はカッコよく見えますし、終わり方も静かではありますが、しっかりとしたカタルシスがありました。