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ダンケルクのTEPPEIのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.8
生き延びた者こそ、勝者。この映画、最初から最後まで「一瞬」である。鑑賞後の今こうして言えることは「ダンケルク」はクリストファー・ノーラン監督の最高傑作である。ライアン・ジョンソンは全編通して時限爆弾と表現しており、批評家たちは印象派であるこの全く新しく、今後語り継がれる戦争映画をノーランの記念碑とまで読んでいる。本作はダンケルクの戦い後の救出作戦、ダイナモ作戦を陸・海・空の視点で描くのだが鳥肌ものだった。ノーランは「メメント」以来のクロスカッティングを何と戦争映画で多用し、その一瞬一瞬のシーンで目が離せない。効果的な音響、スコア、そしてリアリズムを追求した映像美。最高峰のクオリティである。オイルの漏れや鉄さび、靴紐の結び目までチェックをお拘らないノーランの完璧主義ぶりが伺える。息苦しさと狂気、そしてまるで「フルメタル・ジャケット」のように気持ちが拡散していく印象的な演出。そしてIMAX鑑賞を絶対に勧めたい。多くの犠牲を生んだ連合軍とドイツ軍の戦い、決戦はダンケルク。愛国心、忠誠心、正義、悪、狂気と入り混じった感情。登場人物のバックグランドをここまで瞬時に共感させて、キャラクターに深みを吟味できるようにする脚本にもあっぱれ。重苦しく、どよめいた、そして無駄のない台詞…そもそも台詞など少なくていい。この映画はまさに一瞬。
キャスト達の素晴らしさにも感服といえる。トム・ハーディ……文句なし。マーク・ライランス、ケネス・ブラナー…ベテランが固める世界観の保持、そしてノーラン常連のキリアン・マーフィー…ひとりひとりの本気をこの目で見た。もしこの世に本当に唯一無二の職人技があるとすれば、それはクリストファー・ノーランに相応しい。多くは語れない、この映画には強いメッセージ性がある。
犠牲なくして、幸福も勝利も得られない。
総評として「ダンケルク」は今年の公開作品の中でオスカーに近い存在、そのレベルで素晴らしい戦争映画だった。もうそろそろクリストファー・ノーランにオスカーが渡っても良さそうだが、彼のスタイルはスタンリー・キューブリックに近いものがある。それすなわち、彼の作品は一般化や世俗化されない映画に思える。
「ダンケルク」は偉大な映画の1つである。これは間違いないことだ。
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