MARUKO

ダンケルクのMARUKOのネタバレレビュー・内容・結末

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

むちゃくちゃかっこいい……。細部まで計算され尽くした構成に、もう参りました!って感じだった。視点が変わるごとに見方が変わるあの感覚…!

あのときのあの戦闘機はこれで、実はこういう状況なんだけどそれを知らずに地上から見るとこうで。
あのときのあの船はこれで、実はこういう状況なんだけど空から見るとこうで…。

今までに体感したことない構成。
記憶のなかにちらっとかつ鮮明に刻まれた映像が、別視点から撮られていることに気がついたときに、はっ!となる感覚がすごく新鮮でたまらなかった。その構成ゆえに必然的にテンポがよく、最後まで疾走感と緊迫感が衰えることなく進展していった。

“体感せよ”と訴えられているような音、カメラワーク。ものすごい迫力。時計の音が、限られている時間を連想させて、攻め立てられるような気持ちになる。
全てが完璧に計算されていて、いつの間にか世界観に引き込まれ、まるで監督による催眠にかかったようだった。

客観的に観れば完全にお涙頂戴構成だったんだけど、自分には単純にそうは見えなかった。それだけ映し方、音楽を工夫したのだと思う。
戦争という理不尽な状況において、それぞれに運命があって、それは他から見ても分からない。
あの兵士には戦火に散る運命が、あの駆逐艦には沈む運命が、あの青年には助かる運命が待っていた。
ラストの英雄となった戦闘機の運命も現実的で、戦争という状況を忘れさせないエンディングもまたよかった。

ただ、満点をつけなかったのは、この題材にはかっこよすぎたということ。見映えがよすぎた。
時間構成をいじりすぎた気がした。自分はそのせいで陸での“一週間”がとても短く感じてしまった。(戦争映画には“長さ”を感じたい)
素晴らしい音楽が終始流れるのだが、流れすぎている気がした。斬新でかっこいいし自分は嫌いじゃないが、悪く言えばまるですごく長い予告編を見ているような印象も受けた。そのせいで緊迫感を欠く場面もあった。(その他不自然に兵士たちが船の柵沿いに並んで立っていたり、海上の独軍はどこ?ってなったり…)

映像作品として革新的で、衝撃的で、すんばらしかった。しかもこれが100分程度にまとめられているとは恐れ入りました。(ただ、それ以上でも以下でもなかったということ)今年の自分の一番の期待作は間違いなかった。

p.s. アカデミー作品賞は……でも撮影、編集、音響辺りは当たり前のように取ってきそう
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