つるみん

ダンケルクのつるみんのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
3.6
IMAXで観賞。
この映画、開始数秒で勝負がついてしまった……。冒頭の市街地を映した瞬間に我々は戦場に投げ出され、最初の銃声で少なくとも自分は狙撃された。その場にいるような臨場感を極限にまで味わえる106分間。1分1秒たりとも気が抜けない状況が続き、逆に3時間にも4時間にも思えた、耐え抜いた。そんな映画だった。

あらすじは、
第二次大戦中、ドイツ軍の電撃作戦でフランス北部ダンケルクの海岸に追い詰められた連合軍兵士40万人。彼らを救出する大規模な撤退作戦が決行されるのだが……。

そう、今までの戦争映画と180度違うのは〝反撃〟ではなく〝撤退〟というストーリー。だからこそ冒頭から一筋の光すら見えない絶望感しかないのだ。反撃する余力もなく、人間の無力さがここまで映されたものはないだろう。

〝時間〟を操る監督として有名なノーラン監督。深淵なストーリーと斬新なビジュアルから多くの人を魅了してきたが今回も彼ならではの時間軸で初の〝実話〟を映した。防波堤の1週間、海の1日、空の1時間。この3つの出来事を上手く織り交ぜノーラン特有のギミックが本作に多大な効果を与えていた。また主観カメラで描かれる空中戦や海の中でのカメラワークなど、あらゆる戦争描写をリアルに描き切っていた。しかし、敵の姿は一切カメラに映さない。敵機と銃弾のみで逆に恐怖が増す。それは救出と生き残りに焦点を当てるため、これもノーランの業なのだろう。

いま最も次回作を期待されている監督として注目され宣伝広告にもなっていたが、もう1人製作側として注目したいのは作曲家のハンス・ジマー。ノーラン監督とは『ダークナイト 三部作』『インセプション』『インターステラー』と共に名作、名曲を残してきた。が、しかし間違いなく本作のハンス・ジマーの曲が過去作含め1番でしょう。何故あんなにも音楽が印象的なのだろうか?それは台詞の少なさが関係している。終始、緊迫したシーンなので台詞は少なく兵士たちの感情を表現するのに音楽が1番効果的だからだ。如何にも映画的な絶体絶命での台詞や仲間の裏切りから生じる怒りなど全て表現している。彼の曲が映画の世界観、そして映画館をも全て包み込んでいた。命を刻む時計の針のような音が常に流れ、兵士たち絶望感を気味の悪い重低音で表現。座っている座席にまで地響きが伝わりIMAXとの相性は抜群だとも思った。

色々期待されたノーラン映画。
新しい戦争映画と言うよりは類型的なシークエンスや動作を極限まで省いた結果の先にある極上の〝戦争体験〟型ムービーとも言うべきであろうか。監督本人は「VRのような映画にしたい。」と仰っていたようだが彼に映画を撮らせたら3Dも4Dも勝負にならない。
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