YokoGoto

ダンケルクのYokoGotoのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.6
<映画であることを忘れてしまう。だが、映画でしか体験できない、そこにある戦争>

『そうだよ。これ、これ。これを観たかった』
という映画ファンの声が漏れ聞こえる。

そして、
『これでしょ?これが観たいんでしょ。』
というクリストファー・ノーラン監督の絶対的な自信がみなぎる。

そんな、圧巻の一作でした。

戦争映画は数々あれど、様々なメッセージ性があるものから、その場の臨場感をひたすら追体験するようなものまで、幅広い作品がこの世に出ている昨今。

この時代に、実話をベースにしたクリストファー・ノーラン作品が醸し出す作品の質感は、想定されていたとしても、素晴らしいものがありました。

『ダンケルク』は、1940年、フランス北端の海辺の町ダンケルクに追いつめられた英仏40万の兵士たちが、祖国である英国に帰還するという実話を基にした映画ですが、日本人の私は、あまり詳しく知らなかったので、とても新鮮に感じました。

とかく、戦争映画となると反戦メッセージを含んだ作品になりがちですが、本作は、あえて、そういったメッセージよりも、『ダンケルク』で起きた兵士達の帰還へのサバイバル描写を優先し、臨場感溢れる映画手法で、見事に表現したものと思います。

それが、上手いことに成功しています。

映画を見ながら、『これ、どうやって撮ってるんだろう?CGに見え無いなぁ〜』と思っていたのですが、あとから知ったのですが、ほとんどCGは使っていないんですね。

それを知って、映画が倍オモシロく感じてしまいました。

IMAXで観れば良かったのですが、時間帯があわずIMAXではなく、イオンシネマの高音質のULTIRA(ウルティラ)で観ました。音響がすごくて鳥肌が立ちました。

戦争の銃弾や砲撃の音に立体感があり、リアリティを感じてしまい、何度もビクッと体が反応してしまいました。

細かい撮影手法はわからないですが、こういう細かいディテールのクオリティが素晴らしいので、それらが積み上がって、大きな映画の世界観に入り込む感覚になるのではないかと思います。これが、クリストファー・ノーラン監督の力なのでしょう。

キャスティングについては、無名の俳優さんをAuditionで選んだということは知っていましたが、これが、また上手いこと成功しています。
顔を知らないので、画が新鮮でした。必要以上の演技はさせていないように見えましたが、それが逆にリアリティを感じさせてくれます。

でも、要所々々には、ベテラン俳優をきちんとおいているので、作品全体の質感を失わせないのです。素晴らしいと思います。

ただ、前情報をほとんど入れずに鑑賞したのですが、時間軸の大枠だけは知っておけば良かったかな。

『防波堤:1週間、海:1日、空:1時間』の3つの時間軸と、3つの立場からのストーリーが絡み合っていることだけは知っておけば良かったかな。ノーラン作品は時間がややこしいんだった.....後で気付きました。(笑)

あと、個人的にトム・ハーディが大好きで、あの大好きなレオナルド・ディカプリオよりも好きなんですが(笑)、トム・ハーディの役割がかっこ良すぎでした。ここは、ちょっとカッコよく描きすぎたと、監督自身もおっしゃっていますが、確かにかっこ良すぎます。

ただ、空軍パイロットにしては、若干のオーバーエイジ感が。。。。
でも、トムハなんで、完全に許します。(笑)

とにかく、後々まで語り継がれる素晴らしい作品ですので、劇場で観ることをお勧めします。

戦争のメッセージ性よりも臨場感溢れる描写を優先と書きましたが、ラストの数カットは、十分、観る人へのメッセージとして伝わっていると思います。その、押し付けがましくない、クールな感じも好きでした。
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