ダークナイトは好きだけど、あれはノーランが凄いというよりヒースレジャーの力が大きかった作品だし、他の作品ではあんまり感心したことないし、ライジングはもうアレだったし…、という具合にノーラン懐疑派だった私。しかし、本作では思わず首を垂れました。ノーランさん、すんませんしたぁ！。
ハッキリした物語のプロット面白さとか、強烈なキャラクターとか、深みのあるテーマ性があったりする話ではない。群像劇スタイルで複数の主人公がいるわけでもなく、ダンケルクという事態に対峙する無名の人々をロングショットでクールに淡々と撮った作品といえる。しかし、事態が事態で物凄いスケールだし、それをＣＧ無しで実現すると本当にトンデモナイ代物だ！と驚嘆させられる。大量の兵隊さんが、一斉に上空を見上げるシーンがあるのだが、それだけのことなのにゾクッとくるものがあった。この映像としての力はＣＧには不可能。
まず文字通りビックリさせられるのが音響。銃の音声が他とは明確に違う、と思わされた作品は「プライベートライアン」以来。ただ、「プライベートライアン」みたいに露骨なくらいにグチャグチャ描写とか、今まで話てた奴が次の瞬間には死んでるみたいなわかりやすいショック描写は存在しない。しかし、ハンスジマーの音楽と次々に事態が進行するテンポの良い編集とが相俟って非常に緊迫したスキのない物に仕上がっている。
そして全体的に淡々としているからこそ、大袈裟に過ぎない人の心の温かさ、利他的行為という真実の勇気がジーンと胸に響く。台詞でなく映像で物語をちゃんと語ってるから、物語に対する没入度も非常に高いのも良い。100分ほどしかない映画だから間延びしてる感じが全然ないし、むしろもっと見たいよ！、って気持ちにノーラン映画で初めて感じた。ただ、今までのノーラン映画が好きだった人にはこれウケるのかなぁ？。だいぶ大胆に方向転換して複雑より簡明さ、物語より映像を重視したスタイルになっている！。ところでラストショットがよくわからなかったのだが、あれは何なんだろう？。
