安堵霊タラコフスキー

ダンケルクの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.5
毎度一定以上の満足度はあるけどダークナイト以降滅茶苦茶良いって作品が個人的には無いノーランだから、戦場という彼がそれまで取り扱ってなかった真新しいテーマでありながらそこまで期待はしてなかったけど、思った以上に志の高い作品に仕上がっていて中々良い印象を抱いた

というのも、台詞を少なめに映像と音響に力を入れるサイレント的スタンスにいくつもの場所で分かれた視点、船や浸水が重要なファクターになっている点等において、戦艦ポチョムキンっぽい要素があるなと見ていたら終盤でまんまラストのオマージュを挿入してきて意識していることを確信したわけだけど、21世紀において多額の制作費を用いて戦艦ポチョムキンリスペクトな映画を作ろうとする試みだけでもサイレント映画ファンとして嬉しい気持ちになった

多角的な視点がバラバラの時系列のため時間軸がわかりにくくなったり、エイゼンシュテインと違って上手い見栄切り的モンタージュもなくて外連味に欠けていたり、色々物足りない部分があって惜しい気持ちにはなったけど、ヒューゴの不思議な発明でメリエスをリスペクトしたスコセッシやミュージカル愛溢れるララランドを撮ったデミアン・チャゼルのようなことをノーランが戦争映画でやったことは良い意味で実に意外だったし、その試みだけでも感謝を述べたい気持ちになった