うめ

ダンケルクのうめのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
3.9
美しい街並みで、空からまるで花びらのように舞い散る紙。
見上げれば、そこには綺麗な青空が広がる。
わきたつ白い雲。

辿り着いた先では、目の前に暗く輝く海から波が押し寄せる。
砂浜に咲く数えきれないほどの波の花。


そんな美しい景色の中、街でも海でも響きわたる音。
銃声、悲鳴、爆発音、戦闘機の音…
そこかしこに横たわる無数の骸。
そう、どんなに美しくても…そこは戦場なのだ。

三つの異なる場所から、描かれるダンケルクからの撤退。
国、部隊…極限状態で剥き出しになる人間のエゴ…
それでも失われない人としての優しさやモラル、漢気。
決して過剰にドラマティックになる事はない。
あくまでも、それぞれが思いに従って行動していく様子が描かれる。


絡み合う時間軸。
戦場に放り込まれたような臨場感。
内臓まで震えるような音響。
素晴らしい映像。

IMAXの素晴らしい環境で観たからこそ「こんな美しい自然の中で人間は何をしているのだろう…」
人間の良心が起こした奇跡だったのだとは分かっても…そんな気持ちが拭えなかった。
戦争である以上、そこで命を落とす人もたくさんいる。
待つ人達は、みんな生きて帰ってきて欲しい。
英雄にならなかったとしても…

そこもまたノーランの思惑通りなのだろう。
今までの作品ほどの衝撃はなかったのだけど…
観れば観るほどに、底の知れないとんでもない監督だ。
うめ

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