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ダンケルクのotakonのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.5
エキスポシティの次世代IMAXで鑑賞。あそこで観ないとノーランが特にこだわったであろう縦の構図が全て打ち消されてしまって魅力が半減するなと強く感じました。

登場人物達は自らの名前を名乗ったり、家族や故郷を語る回想シーンなどの、クライマックスでこちらを泣かせるために用意されるありがちな素材は皆無。ポンコツチームが奇跡の一発逆転!とか1人の兵士の活躍を英雄的に描いてるわけでもない。劇中では常に「今、この瞬間」しか映らない。

さらに、戦闘シーン(と言ってもただひたすら逃げ惑うだけだが)でも誰かの血しぶきが飛ぶ事は無いし、四肢や脳漿が弾ける事も無い。ゴア要素も一切排除した事で、戦場でのいつ襲われるか分からない緊迫感や人間同士のやり取りが、よりソリッドに描かれていて、ノーラン自身が「タイム・サスペンスもの」と言っていた理由がよく分かる。

マッドマックスでミスランディア達を救った後、ウォー・タンクの窓から親指を立てるシーン。あれに勝るとも劣らない名演技をトム・ハーディが見せてくれたのもとても嬉しかった。眼しか映ってないのにあれだけの演技が出来るのは凄い。

観客は開始数分からラストまで戦場のど真ん中に叩き込まれ、鳴り止まない時計の秒針音(ノーラン自身の時計の音らしい。良い意味で悪趣味である)とハンス・ジマーの紡ぐ不気味な無限音階の中で、ダンケルクから兵士達と共に逃げ惑い、故国まで生き延びようとしなければならない。106分の尺も丁度良かった。あの内容で2時間半あったら精神がもたないw 至高の映画体験でした。
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