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ダンケルクのpanpieのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.0
やっとやっと「新感染」の呪縛が解けてきたので(笑)観に行く事が出来た。(でもまだ2回目観に行きたいです!(^^;;)
我慢してほぼレビューを読まない様にしていた為詳細を知らないまま観に行けたお陰で次の展開が読めず手に汗握った。


音響が凄い!
終始聞こえる重低音に心が揺さぶられ続け物凄い緊張感だ!
音響の素晴らしさは「メッセージ」を思い起こさせた。


私が感情移入したのはトム・ハーディが演じたファリア。
燃料計が壊れ仲間に教えてもらった残りの燃料と時間を機体に書き帰還する為に必要な燃料を計算するが予定通りには行かず仲間のコリンズは撃たれ海に不時着する。
いよいよ一人になり援護する者もいなくなるが辛抱強く敵機を撃ち落とす。
もう帰還する燃料がなくなりプロペラも止まるが風に乗って最後まで戦う姿が印象的だった。
そしてダンケルクの浜辺へ機体が徐々に降下する中手動で車輪を下ろす所はヒヤヒヤした。
実在の人物なのかは分からないけど彼もダンケルクの英雄の一人だった。


こんな戦争映画は初めてだ。
撤退の物語。
戦争映画は攻めて攻めて攻めまくるのが当たり前だったけれどこんな視点で描かれたのを観るのは初めてだ。
対ドイツ軍なのに全くドイツ兵が出て来ない。


戦争に命を捧げる事は素晴らしいことなんかじゃない。
間違っている。
生きてこそ。
生きて故郷へ帰る。
生きている事が全てなのに。
生きて帰る事は恥ずかしい事ではないのに。


登場人物がこのまま帰れない、とラストで呟くシーンがあるがそんな事はない。
家族も生還を待ちわびているし戦死者より生存者を増やす方がどんだけ意味がある事なんだと力説したい。。
生き残って後ろめたいなんて考えは間違っている。
生きて帰ってこそなのに。


流石民主主義大国イギリス!
ラストで兵士達の帰還に駅に迎えに来ていた国民と兵士達の喜びに酔う姿に日本兵へ思いを馳せた。
玉砕した日本兵の事を思うと胸が痛む。
日本兵だって生きて帰って来たかった筈。
それを許さなかったのは軍。
生きて帰るのは恥だなんて。
お国の為なんて本当はどうでもよくて家族は皆生きて帰って来て欲しかっただろうに。


浜辺に打ち上げられた船に隠れていた時にドイツ軍が撃ってきて船体に穴が開くシーンでギブソンをドイツ軍のスパイと言ってあわや殺そうとするアレックスの心理から同じ隊だったり国だったり戦争は妙な団結心も煽るのだな。
ギブソンを庇ったトミーですら危なかったのにラストで汽車の中で何故向かい合って座る!とトミーにイラッとした。
でもその後アレックスは自分の汚い面を目の当たりにして意気消沈していた姿もまた人間なんだなと思った。


クリストファー・ノーランはきっと撤退して残せた命があった事を描きたかったのだろう。
銃撃シーンで撃たれて倒れる事はあったけどほぼ従来の様な戦争映画にありがちな阿鼻叫喚の地獄絵図は今作には1ミリも描かれていない。
こんな映画もありだと思うし撤退する勇気を描いた戦争映画があってもいいと思った。
同盟軍でありながらフランス人は船に乗せないなど差別するシーンも見受けられ十分戦争をリアルに感じた。
戦争は人間本来のエゴを露わにし正体をさらけ出す。
違う側面から戦争を描いた今作に戦争映画の新しい形を見た。


正直入り込めなかったのでやっぱりノーランとは相性が悪いのかなぁ。笑
ただトム・ハーディはカッコ良かったです!(#^.^#)
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