いにょ

ダンケルクのいにょのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.5
2017年97本目。

最高過ぎた。。これまでの戦争映画の枠をぶっこわすような映像構造と視点。ストーリーを楽しむタイプの映画というよりは、極限の没入感を目指した究極の映像体験と言えるような作品。

クリストファー・ノーランのこれまでの作品は一貫して、時間や空間を再構築して鑑賞者を迷い込ませるような映像構造だけど、ダンケルクもそのタイプに分類できる。

ダンケルクの戦いでイギリス軍がドーバー海峡を渡って脱出するまでの史実を、3つの時間軸に分割し、それぞれの登場人物に起こる出来事を重ねながら多層的・並列的に描く。

時間軸の違う個々のストーリーが少しずつ並列的に進行するんだけど、象徴となるシーンを多層的に重ね合わせているところが何とも巧み過ぎて。ある時間軸で飛行機にまつわるシーンのときに、その直後に流れる別の時間軸のシーンでも飛行機にまつわるシーンを重ねていたり。沈没に関わるシーンなども同様。

直接的に人としての敵の姿はほぼ描かれない。それは沈没と空襲の恐怖に限りなく抽象化され、鑑賞者は波と暗闇、雷鳴のような爆発音で目に見えない戦場の恐怖を追体験することになる。

そして、戦争映画というとウェットで感情のからむ映画が多いイメージがあるけど、個々のストーリー背景や人物背景などの情報はほぼ皆無。

撮り方も何人かの登場人物の背中を第三者視点で無表情で追うように、個々の映像は何の感情も込められていないかのように極めてニュートラルで観察的。

それが素晴らしすぎて。背景情報が何も与えられないまま、人物に対して何の感情も励起されない状態で映像にさらされるので、鑑賞者は解釈や感情移入というフィルターを通すことなく、ただただドストレートに抽象化された恐怖や緊張感にさらされることになる。

ハンス・ジマーの音楽がヤバイ。それぞれのシーンのクライマックスに向けて、バスドラやチェロによるベースリズムが、足音に合わせる形だったり、心臓の鼓動を表現していたりしていて、緩やかにそのテンポが加速していく。鑑賞者までテンポの加速に伴って呼吸や鼓動が無意識に協調するように加速させられ、サブリミナル的に戦場の緊張感を強いられる。

構成・映像・音楽・音響の全てが統合してひとつの体験の実現のために向けられていて、なんかもう色々すごすぎる。映画ではなく映像体験なんだと思って、鑑賞環境には絶対にこだわってIMAXで観た方が良いです。映像もそうなんだけど、音楽と音響も本当に凄い。