ぴのした

ダンケルクのぴのしたのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
3.9
上映時間106分の間、強制的に映画館から戦場に連れて行かれた気分。

IMAXで見たこともあって、何より臨場感がすごい。

冒頭の銃撃から走って逃げるシーンでは、映画を見ている自分も兵士たちと一緒に走ってる気がした(なんなら自分が撃たれるんじゃないかとさえ本気で思った)し、駆逐艦が沈むシーンでは本気で自分も溺れているように感じて息苦しかったし、戦闘機どうしの空中戦のシーンでは、ズバババッていう空を裂く唐突な射撃音に毎回ビクッとさせられた。

チクタクチクタクっていう時計の音っぽい音や、ギーギーなる不穏な機械音をBGMに多用していて、それがまた観客の不安を煽る。

撮り方も臨場感たっぷりで、兵士たちの動きに合わせてカメラが動くというか、兵士たちが走ればカメラも手持ちでブレながら走るし、兵士が溺れればカメラもまともに人物を追わずに一緒に溺れるし、撃たれてる時も撃ってくる相手の姿が見えない。説明的な撮り方をあまりしない。戦場だからね。

そんなかんだでありあまる臨場感ですごく動悸が早くなったし、変な汗をかいた。終わった後だいぶ寿命が縮んだ気がした。内容はそんなことないんだけど、体感的にはもはやホラー映画。心臓に悪い。

まさに戦争の疑似体験(といったら本当に戦争を知ってる人に怒られそうだけど)のように感じた。

ストーリーは、第二次世界大戦中、ドイツ軍がフランスを占拠して英仏軍を海岸に追い詰めたところから始まる。その追い詰められたところの地名がダンケルク。包囲されて勝ち目はなく、なんとかドーバー海峡を超えてイギリスに逃げたい兵士たち、兵士たちを救出しようと遊覧船をダンケルクへ向かわせる民間人たち、ダンケルクを襲うドイツの戦闘機と戦いに行くイギリスの戦闘機パイロットたち、の3つの場面3つの主役で物語が進んで行く。

注目すべきはやはりダンケルクに取り残された兵士たちのセクション。極限の状態で他人を押しのけても自分だけは助かりたいもの。英仏どちらの人間かで扱いが違ったり、所属する部隊が違えばよそ者扱いもされるし、とにかくみんなデスゲーム漫画ばりに他人を蹴落として生き残ろうとする。

戦争(しかも負け戦)という究極の状態をとてもミクロな部分から描いているように思った。大勢が銃撃戦で血を流して倒れるっていうありふれた戦争の悲惨なイメージよりも、浸水した船から1人を放り出さなきゃいけない時に、誰を放り出すかみたいな露骨で血生臭い論争のシーンをがっつり描くことで、一番生々しい戦争の本質を捉えたかったようにも思えた。

まだしばらく映画館でやってるので、ぜひIMAXで。早く帰りたくなること請け負いです。