doji

ダンケルクのdojiのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
-
これはちょっととんでもない映像と音だ。感じたことのないほどの空と海の広さと、その対照的なほどの息苦しさ、唐突に空気を切り裂く銃声と爆撃音。戦場に放り込まれる感覚という前評判通り、これまでの戦争映画がその惨状を目の当たりにするものだったのに対して、この映画はまさしく体験というレベルで観客の感覚を揺さぶってくる。

そしてフィルムにこだわるノーランの意思が伝わるほど、こんなにも美しい質感の映像をみたことは指折り数えて少ないのではないかとまでに思う。なにより人物たちの顔がどれもいい。汚れ、怒りに歪み、醜くとも、それをまるごと美しくカメラは表情を活写していく。相変わらずノーランの映画は血が吹き出すことがなく進行するが、この顔が語る生の存在感が、動かなくなったひとびとの静けさと死を強烈に感じさせる。間違いなく彼の最高傑作だと思う。
doji

doji