かもめ

ダンケルクのかもめのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
3.9
うーん、びっくりしました。笑
銃弾の音にびくびくしすぎてなんてったってもう。
ふつーに映画館で観てあのレベルですから、4Dとか死んじゃうと思う。w

さて、内容についてですが。

まあ、さすがノーラン、って感じで。
どなたかのレビューで“ノーラン作品は「どう俺頭いいでしょ?」感があって鼻につく”って見たことがありましたが、わからんでもなくて。笑(※私はノーランファンですよ!!!)
今回は、3つの視点をひとつの時間軸にまとめて進んでいきます。そういうの、もう大好物です。
陸の一週間、海の一日、空の一時間。
これが同時に進むわけですよ。うーん、好き。

そしてずーっと息苦しいです。
水責め、蜂の巣、脱出不可、燃料切れ、砲撃などなど…
こっちまで一緒に息止めちゃう。
すげえ疲れますよ、ほんとにw

前回『ワンダーウーマン』の時もちらりと触れたTwitter問題。(知りたくないから話題にしないでほしいんですけどね。)
『ダンケルク』でも、“イケメンいっぱい出てくるから女子も見に来てねー♡”みたいな悪ノリが炎上しておりました。
私もそれ腹立つけどさぁ…確かにイケメン祭でしたよ。笑
橘ケイタ似(※個人の感想です)の主演の彼と、チャンドンゴン似(※個人の感想です)の青年フランス兵、そしてハリースタイルズ。(←ひとりだけ個人名)一場面だけを切り取れば、青春群像劇のようなのにね。
トムハ、キリアンらノーランファミリーも含め、なかなか眼福でした…
確かに時代的にも、女性は前面には出てこないしね。

また、終わり方もノーランらしからぬ美しさでしたねー。笑
希望の残るエンディング。
ただ、最後の台詞と新聞紙を閉じる音からうがった見方をすれば、戦いはまだ続く、ということで。
生きて帰ってこられたことを素直に喜べない。こんなことって、悲しすぎるよね。老いも若きも、死ぬまで戦わなければならない。終戦が先か、死ぬのが先か。こんな先の見えない苦しみの中に、彼らはいる。
トムハの最後についてもそうだ。あの場面は、何とも言えない。あえて言葉にしない。レビューを見返す度に、彼に思いを馳せたい。

この映画のすごいところは、結局誰にも感情移入できないし、してはいけないところだ。それでも惹きつけられるし、考えさせられる。(珍しく短い時間に収めているのも、集中を切らさない工夫なのだろうけど。)
英、仏、独軍、主人公にさえ感情移入できない(もっと言うと、感情移入させるだけの人間性も描いていない)。ノーランもこの映画については、史実に基づいていることもあって、“訴えたいこと”を全面にもってきたかったんだろう。
最初の言葉じゃないが、観ている私も銃弾、砲撃、爆撃機の音におびえていた。兵士のひとりになった心地で、何とか生き延びようと逃げ悶える。安全な場所などないから、安心はできない。一時も気が休まらない。飲水もない。食糧は配給のパン一枚。

戦争は、怖い。

ただそれだけを思ってた。不服そうなハリーの顔を見ると切なかった。
ジョージの新聞記事さえ哀しくなる。ただ、あそこにだけは優しさと強さと穏やかさがあった。

確か2,3年前くらいからこの映画を待ち望んでいたけど、今このタイミングで公開になるのは、何だか警告じみたものを感じる。
「私達の世代が始めた戦争で、子どもたちを戦場に送ることになってしまった」
有事のとき、せめてそう思ってくれるオトナが、この日本にどれくらいいるのだろうか。

そんなことを考えさせられる一本でした。
ノーラン監督の新しい一面を観たような気がしました。
かもめ

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