むらさきの月

ダンケルクのむらさきの月のネタバレレビュー・内容・結末

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

この作品のエンドロールが流れているあいだ
ルパート・ブルックの詩「The Soldier」の断片が浮かんでた

クリストファー・ノーラン監督「DUNKIRK」を鑑賞
IMAXと65mmフィルムの組み合わせの
映像と音響システムは最強
映画館の客席に座ったまま
ダンケルクにとり残された兵士のひとりとなる

1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する。by シネマトゥディ

ストーリーを出来るだけ削ぎ落してピュアな視覚体験を重視し
映像だけで物語を語ることに拘った作品
陸、海、空
それぞれの時間軸がパズルのように絡み合い
最終目的のダンケルク脱出の時間を
リアルに再現したサスペンス映画
薄味の戦争映画など否定的な意見も多くみられる賛否両論の作品だけれど、私にとっては香り高く奥の深い味のする
超最高の106分の作品だったと記録しておこう♪
そして、この救出作戦の多くの生存者の影に
犠牲となった人たちが多く居たことも忘れない…
ということも追記

以下、備忘録。
これから鑑賞を予定されている方はスルーして下さい

〇映像
これはもう 是非、大阪のIMAXシステムで観てみたかったT^T
東京に同じシステムが無いというのが残念で仕方がないけど
大スクリーンで観る映画の醍醐味を 
生まれて2度目の経験をした(1度目は、初めて観た映画)作品
流石に、どのシーンも大画面がいいとは言い難いけど
スピットファイアとメッサーシュミットの空中戦の迫力は鳥肌モノだし
撃墜されて海上に不時着するスピットファイアの緊張感溢れるシーンはカッコよすぎる!
そして、俯瞰する
ダンケルクの白い砂浜 
陽射しをうけて煌めく海の風景は
残酷な戦場となっても 
自然は関係なく美しいということを、映像を通して改めて思い知った

〇ハンス・ジマーの音楽
彼の音の世界、今回も良かった♪
姿の見えないモノたち(敵の姿や時間の流れ、恐怖や死)を表す音楽の数々は
映像に緊張感を与え、観客の想像力を刺激する
彼の得意とする音の響きの中に
エニグマのニムロドの旋律が現れた時
もう間もなくこの映画が終わりに近づいていることに気がつく
ダンケルクにかかわった人々の心情を 
彼のオリジナルの曲でなくニムロドの旋律を用いたこと 
私は英国人じゃないけど 聴いていてちょっと感動してしまった
彼はニムロドをモチーフにして2曲「The Home」と「Variation 15」を書いている
「Variation 15」は 多分…エニグマが14曲で終わっているので、この曲が15番目の曲という意味のタイトルなんだろう…
とても洒落ている

〇出演者について
この作品、ホントにセリフが少ない
おかげで、字幕に煩わされず映像に集中できた
ただ、セリフが少なければ少ないほど
登場人物の発した言葉
俳優たちが演じた 
そこに存在していたであろう架空の人物たちの
一挙一動の映像の持つ意味と思いは とても重い
冒頭、ダンケルク防衛の最前線で戦っている兵士が
走り去っていく兵士を見送る眼差し
自らの命を顧みずダンケルクへ救出に向かう多くの民間人の姿
ダンケルクの脱出を最後まで空から防衛していたパイロットが
任務を終え、
地上に降り立った後にドイツ軍に捕らえられる時の表情
イギリス軍撤退を見届けてもなお
ダンケルクに留まる指揮官の姿 などなど…
クリストファー・ノーラン氏の緻密な演出采配はスゴイ
Mr.ドーソン:マーク・ライアンス
ボルトン海軍中佐:ケネス・ブラナー
ファリア:トム・ハーディーをはじめ 
主要な役を務めていた俳優の演技は秀逸
名もなきエキストラで出演していた多くの
若手俳優たちの初々しい演技
大所帯のアンサンブルなのに、不思議な統一感はお見事

ハクソ―・リッジ、プライベート・ライアンのような
一般的に言う「リアリティを追及した残酷な映像」は全く無い
血飛沫、肉片が飛び散り、無残な死骸に目を背けるような場面が無いので、戦争未体験の親子が安心して劇場で戦場を疑似体験するいい作品

唯一 
このダンケルクのダイナモ作戦を俯瞰しているのは観客のみ
こんな時 自分はどう生き残るか
兵士のひとりとして、考えながらこの作品を見ていくのもいいし
IMAXと65mmフィルムの美しい映像に心奪われるのも良し
ハンス・ジマーの「DUNKIRKサウンド」の音浴をするもよし
出演俳優の秀逸な演技を楽しむのも良し
最初、観る気が全く無かったけれど
今は 映画館に足を運んでよかったと 
心から良かったと思っていることも追記
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