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ダンケルクのyokoのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.2
音も映像もすごいし、ドラマとしてもキャラクターの心情や葛藤が良く描けているし、戦闘シーンも面白いし、3つの時間軸が最後に収束する構成も良くまとまっている。大変優れた映画である。
以下、あくまでそれを前提にしての駄文だが、この映画が公開される前、ノーランに関する始めての研究書という触れ込みで『クリストファー・ノーランの嘘』という本が出た。買っただけでまだ読んでないし、ノーランの映画を全部見ている訳でもないけど、とりあえずこのタイトルから広げると、『ダンケルク』における最大の、明らかな嘘は「ノーランが実話に挑む」というあのキャッチコピーだろう。ダンケルク撤退戦は実際の出来事だが、この映画に登場するのは架空の人物と架空の物語ばかりで別に実話の映画化ではない。作戦に関わったうちのごく一部の (架空の) 人々にスポットを当て、その視点がチャーチルだの作戦の前日談だの、よりマクロなレベルへ広がることはない。
『ダンケルク』をとても楽しみながらも、違和感を持ったのはそこで、戦争を全体のスケールからするととてもミクロなレベルで描いていることが果たして適切なのだろうかという疑問が消せなかった。作戦に加わった多くの民間船がちょっとだけ映るのだが、彼らは基本物語からなんだか忘れられたかのような扱いだ。あれほどの大規模な実話を、極小化された作り話に変えてしまっていいものなのだろうか。他の戦争映画に対して、そういうことは普通感じないのだが、構成によるものなのか、あるいは「実話」を押し出したプロモーションのせいなのか、その辺り自分でも良くわからない。
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