Solaris8

ダンケルクのSolaris8のレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.5
今年は反戦を考えさせられる映画を何本か観た事もあって、
映画「ダンケルク」が戦争の娯楽大作のように思え、観る事に多少、躊躇いが有った。

年末に「ヒトラーに屈しなかった国王」「日の名残り」「否定と肯定」「人生はシネマティック」、第二次世界大戦に纏わる映画を多く観た。

「日の名残り」では執事の目を通して、第二次世界大戦前のナチスドイツの外交政策に対して翻弄される英国の姿勢が描かれ、「ヒトラーに屈しなかった国王」では、ダンケルク撤退の二ヶ月前に、ナチスドイツがノルウェイに進攻していたが、戦争は反戦が全てではないように思えた。

米国人だと思っていたノーラン監督がロンドン生まれの英国人の国籍を持っている事を知り、12/23 名画座の目黒シネマで「ダンケルク」を観てきた。

戦争を体験した大多数の人は司令官のように戦略的目的を知る術もなく、戦争を担う一兵卒として見えない敵と闘い、目的を知らないまま戦っているのが現実だと思う。その瞬間を生き残ろうとする戦争の描き方が斬新で目新しい事は間違いないが、その表現方法が英国人が誇りとするダンケルク魂を描く事に相応しかったからこそストレートに描いたのだろう。

自国の兵隊を誇りに思い、王立空軍に尊敬の念を抱き、英国のパイロットのヒーローが沢山の命を救いだし、そのヒーローに憧れる。
戦争に参加していない民間人も漁船で出航し命がけで人を救おうとし、本土で迎える住人も兵隊の苦労を労う。人があるべき姿を描き、偉人を敬い、自国を愛する事に、娯楽映画と反戦映画の間には格差はない。


「日の名残り」のクライマックスで風光明媚な英国の港町のウェイマスの黄昏が描かれていたが、その港町の民間人が、ダンケルク撤退に協力し、映画「ダンケルク」に出てくる。

ダンケルクで難を逃れた兵隊は電車に乗っていたが、ウォーキングという街でウェイマスの地方新聞を見ながらロンドン方面へ向かう。その僅か一週間後、「ヒトラーに屈しなかった国王」の主人公、ホーコン7世はノルウェーから亡命し、6/10 ロンドンのユーストン駅に降り立った。

その後、英国は本土決戦を控え、「人生はシネマティック」で、空襲が酷いロンドンで地下鉄のTUBEに避難しながら、ダンケルク撤退に関する国威高揚の映画を作る。

映画も組み合わせて横断的に観ると世界観が広がって面白い。自分は、ブリディシュエア便でドーバー海峡を渡ったり、ロンドンの地下鉄に乗って、ユーストン駅からオックスフォード行きの電車に乗った事が在るが、そんな史実を今更ながら、映画に教えて貰って、感慨深い。

どうしてもナチスドイツが悪の題材になりやすいが、英国も大英帝国として他国を侵略して栄華を誇った過去が在り、公平な目で色んな国々の映画を観ていきたい。今年一年、東京で行われた映画祭やミニシアターで色んな国の映画を鑑賞させて貰った。映画を見逃しても名画座も多く、映画鑑賞には恵まれた。来月から故郷で勤務する事になってしまうが、ネットの時代でもあり、映画公開に関して何れ、地域格差が無くなる事を期待している。