naoズfirm

ダンケルクのnaoズfirmのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
3.9

第二次世界大戦🎬

ストーリーは史上最大の救出作戦「ダイナモ作戦」をもとに描いた作品でした。今作はいわゆる王道的な戦争映画とは全く違う、意外性あふれる作品でした。

王道的な戦争映画だと

・主人公たちの戦闘シーンが全くない
・血も全く流れない
・敵のドイツ軍兵士の姿が全く描かれない
・映画中で善悪の価値判断がなされない
上記のようなことが描かれています。しかし今作は「丸腰での撤退作戦」なので、敵襲や過酷な自然環境の中、主人公たちがこの撤退戦を「どう生き延びて」「どう協力しあうのか」という「サバイバル」に焦点が当たっています。

今作の見所は生き延びようと必死な兵士や、名も無き英雄たちの活躍です。死と隣り合わせの生き地獄のような戦場で、兵士たちの「生」への渇望を感じられる映像は凄まじかったです。そしてサバイバルが克明に描かれる一方で、さり気なく描かれたのが名も無き英雄たちの尊い自己犠牲精神でした。30万もの兵を救う為、多くの人が命をかける、自分たちにできる利他精神を淡々と発揮して、撤退戦に協力したお陰で30万の兵を救い出す大成功に導けたのだと考えました。

そしてこの映画は、ゲイリー・オールドマンがアカデミー主演男優賞を獲得した「ウィンストン・チャーチル」と密接に繋がっています。「ウィンストン・チャーチル」でもダンケルクの戦いについて一瞬だけ触れますが、ほとんど内容については触れられませんでした。ダンケルクの戦い後、世界はどうなったかというと、ラストシーンのすぐ1ヶ月もしないうちに、フランスはドイツにあっさりと降伏してしまいます。ヒトラー率いるドイツ軍は、フランス軍の構築した防衛戦「マジノ線」を突破し、電撃的にパリを占領。そして装備・兵力ともにドイツ軍に劣るフランス軍は、1940年6月には降伏し、フランスに親ナチスの傀儡政権が樹立されました。

ついで1940年7月以降、ヒトラーはイギリスにも空爆を開始し、上陸作戦を実行します。しかし、撤退作戦の大成功で、チャーチル首相以下、徹底抗戦への士気が高まっていたイギリスは、ギリギリのところで本土決戦を防衛してピンチを切り抜けました。以後は、連合軍にアメリカが参戦したことによって形勢は徐々に連合軍側に傾いて行きました。しかし、イギリスにとっては「ダンケルクの戦い」で撤退作戦を成功させ、約20万人の遠征軍の将兵を無傷で温存できたことが、精神的にも物理的にも、占領される水際でドイツ軍を撃退する力になりました。

これはチャーチルの演説から抜粋したものですがとても印象に残っています。
we shall defend our island, whatever the cost may be. We shall fight on the beaches, we shall fight on the landing grounds, we shall fight in the fields and in the streets, we shall fight in the hills; we shall never surrender
「ダンケルクの戦い」直前、65歳にしてようやく念願の首相の座が回ってきたチャーチルは、周囲の側近たちが弱気になる中、「徹底抗戦」を主張して一歩も譲らず、国民を力強いスピーチで鼓舞し続けたました。嫌われ者だったチャーチルが英雄に変わった瞬間です。
naoズfirm

naoズfirm