さんおつ

ダンケルクのさんおつのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.5
2017年作品。DVDにて鑑賞。
公開時IMAXでも鑑賞。

つくづく特異な映画だと思う。全くややこしくないハナシをわざわざ、陸海空3つの視点から描き、全編ほぼCGを使わず、今時、戦艦や戦闘機の実機のレプリカを使用し、軍隊もエキストラを大量に用意し、撮影は65mmフィルム。主役は、殆ど喋らない上に無名な俳優(フィン・ホワイトヘッド)。映画は「撤退作戦」である「ダンケルクの戦い」を描くが、連合国側というかイギリス軍の兵士たちは、ナチス=ドイツ空軍の爆撃&銃撃からひたすら逃げ惑うだけ。一切戦いません。一応、空軍は最後の最後でちょこっと活躍するけど。

こ~ゆ~映画をシネコンのスクリーンに乗っけてそれなりに客を入れようってのが恐れ入る。多分、(騙された)客の半分ぐらいは「?」だったんじゃないかな。それぐらいアヴァンギャルドな戦争映画です。

この映画、フィルムの感触というか画面の感じがすこぶる良いです。撮影は「インターステラ―」でも組んだホイテ・ヴァン・ホイテマ。冒頭の無人になったダンケルクの街の空気感といい、戦闘機や戦艦の金属的な感触といい、砂浜の乾いた感じといい、空や海の色合いといい出色のデキです。

音響もすごい!船の中で金属がギシギシいうところは恐ろしいし、銃声も嘘くさくない。戦闘機の中もガタガタ揺れて緊迫感が高まる。ハンス・ジマーのスコアもメロディーが全くなく、ブォーンとかチッチッチッチとか、ダンダンダンとかいうやつで焦燥感を煽ります。

映画は、最初の1.防波堤(1週間)、2.海(1日)、3.空(1時間)っていうテロップでテンションが上がりますが、しっかり覚えておく必要あり。しかし、この映画、難易度が高いのは役者の見分け方。ヒゲとかメガネとか体型が太い人とかがいれば覚えやすいんですが、み~んな似たような顔です。特に「空」はトム・ハーディともう一人(ジャック・ロウデン)は難易度MAX ! マスクしてるのと、おんなじ戦闘機に乗ってるのもあって見分けがつきません。ま、これはネタバレではないと思うので書いておくと、燃料計がぶっ壊れてる方がトムハです。参考にならないか。

ノーランは意地悪いのか生真面目なのか分かりませんが、キャストの個性を殺すような使い方をしていて、ちょっと話題になった1D?だか2D?だかのハリー・スタイルズがどの人か未だにわかりません。ま、わからなくても問題ないけど、キリアン・マーフィーすら分からないのはちょっと凄い。あの特徴的な目元を前髪で隠してるんですね。あと結構重要人物のギブソン=アナイリン・バーナード(こいつも喋らない)も存在感薄すぎて、主人公とず~っと一緒にいるんですが、「え?まだいたの?」って思いました。

展開的には、1週間の話、1日の話、1時間の話が断片的に(オムニバスみたいな感じで?)ポンポン飛んでいくので、観客が「今ドコ?」っていうのを把握しながら見ないと道に迷います。まあ、時系列いじりは先述の理由でタランティーノの3倍ぐらい分かりづらいです。

しかし、この「CG使わない」主義はビョーキの域に達していて、兵隊や装甲車の数を増やすのに、厚紙切り抜いて作ったのを立てて撮影したそうです。ドコだろう?わかんなかった。戦闘機の窓から見える戦艦もホンモノ、落ちた戦闘機の水柱もホンモノってどんだけ?

撃墜される敵の飛行機はでかいラジコンで、コリンズ役のジャック・ロウデンは、ホントーに戦闘機に乗って演技してるんだって。

そ~いえば、ナチス・ドイツ側の兵隊が一切出てこないのもオモシロイ。

主人公が最初の方で銃撃受けるところ。逃げたさきにフランス側の陣地があって、観客は一瞬わかんないけど、主人公は分かってて「イギリス(人)だ!」ってフランス語で言うトコも、フランス側の兵隊がボンボヤージュっていうトコも、一切説明はないけど、何か決定的なシーンだっていうのは分かる。

ラストは初めのトコの反復・変奏で、テーマを統一している。初めのところは、ナチス側が「降伏せよ!」っていうビラを空から撒いてそれを主人公たちが手に取って読むんだけど、終わりは...っていうところも気に入りました!