このレビューはネタバレを含みます
ダイナモ作戦における
陸の一週間
海の一日
空の一時間
ばらばら時間軸の物語を100分間に詰め込んだ作品
そのため僕の脳みそでは処理が追いつかなかった
空でのこの瞬間が海でのどこでつながるのか
そういう物語同士の結節点を探しながら観ていたが
なんせ
それぞれの時間スケールが違いすぎ
展開を説明するナレーションもなければ
感情移入できるキャラも登場しない
結局考えることはやめにして映像の波に身を委ねるしかなかった
しかし不思議なことに見終わった率直な感想は「面白い」である
それはダンケルク脱出劇への没入感である
感情移入とはまた別の感覚である
いわゆる緊張感とか手に汗握るとか息付かせぬ体験
そう
この映画はストーリーではない
エクスペリエンスである
死への危機感にだけ追われてダンケルクからの脱出を試みる主人公には
感情移入を成功させるために必要な条件が揃っているとは言い難い
にも関わらずこの映画は見事に僕をあの世界に引き入れてくれた
あの脱出劇はひょっとすると
本当に自分の経験なのかもしれない
僕はダンケルクにいてわけもわからず
銃弾を逃れ
爆撃を逃れ
水没する船を逃れ
重油の海を泳いでいたのかもしれない
そんな錯覚を抱くほどに没入感があった
主人公の成長劇やジレンマを追体験するのとはまた違った新しい映画体験だったように思う