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ダンケルクのnyのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.5
”よく頑張った。””生き残っただけだ。””それで十分だ”

IMAXにて貸切何回も見てきたダンケルクの再鑑賞。ダンケルクはIMAXに限る、臨場感と没入感。後ろから飛んでくる銃弾が1番苦手。

予告編でテネットのロングバージョンの予告を見れたのが思わぬ収穫。飛行機爆破のシーンがしっかり使われていて笑ってしまった。”CGより実際の方が安く済むから”。ノーラン節。

紙切れの雨、銃の中を走るフィン、真っ白に広がる砂浜。何回も見ているはずなのに不鮮明な記憶が蘇ってくる。
用を足してるトミーと偽造工作しているギブソンがお互い名も知らないのに相手を思う関係が好き。商用船の中でトミーが、すごい勢いで庇うシーンも好きだ。戦争を描くにあたりしんどい事ばかりだけど、このようなシーンが見ようと思う後押しになる。

1.THE MOLE 1WEEK
2.THE SEA 1DAY
3.THE AIR 1HOUR
同時並行に3つの出来事が進行し、時系列グチャグチャに絡みあいながら進む構成。ダンケルクはストーリーテラーで、また圧倒的な映像を撮るノーランにとって、後者に特化した映画だと思うけれど構成にも勿論抜かりがないな〜と思う。

この映画は圧倒的に音。音。針が時を刻む音、怪我人を運ぶ足跡の音。船、戦闘機が軋む音。特に時計の針の音は、聞いているだけで見ているこちらの鼓動も早まる。胸の鼓動が間に合わない。
またトミーが電車で眠りについた瞬間、時計の針の音がしなくなるの、そういうところだよノーラン…

船と戦闘機を意味分からないくらいに爆発させて、沈めるし規模….と頭が痛くなってしまう。ビッグ規模すぎるんだわ…..

映像で戦わせたら右に出るものがないくらいに凝られているから、つい映像の事ばかり話してしまうけどキャラクターが熱い。セリフ量も多くない。キリアンなんて、あの子は大丈夫か?くらいしかセリフがない。アナイリンなんて、フランス語の1台詞だけ。そんな中人柄がドーンと伝わるのが面白い。
戦争中のあの状況下で、自分の命よりも大切なものはないと必死になるアレックスの気も理解できる。一方ピーターやドーソンのような人徳者もいると思うと考えちゃうな。アレックスのような考え方をする人に怒りさえも感情をそもそももたないけど、ピーターやドーソンのような人にはいくらでも思うところがあるし…”私たちの代が戦争を始め、子供を戦場に送ってしまった。”という使命のために善を全うする人もいるし……本当ドーソンファム……
新聞社にジョージのことを伝えにいくシーンは、安っぽいことをいうようだけど込み上げるものがある。
関連することを話すと、ボルトン海軍中佐が”It’s home”と民間船の群れに向かってこぼすシーンは印象的だな〜と思うと同時に、心の余裕って大事だな〜と。”今は階級など関係ない。私はフランス軍のために残る。”
と思えば必ず戻ると言って戻るなと叫び倒す英国兵もいる。わかるんだよ〜気持ちはと思いつつも擁護をしきれない。1人でも多くの人を助けるために、多くを犠牲に晒すかそれとも1人は見捨てるか。今読んでいる伊坂作品に重なり色々考えてしまった。

”ムーンストーン号の船長は私だ。そしてその息子もいる。”私が大好きなライン。私情を挟むと赤ニットのトムグリがグイグイくるのも良いし、それに対してバリーがもろバブなのが良い。キリアン演じる英国兵にすぐ紅茶出して、毛布で包んであげるの本当に良い子…..好き…..になってしまう。ここからが止まらないキャスト愛。ノーラン常連組はもちろん、キャストの大半を映画初主演の役者で固めたのが、ダークナイト/インセプション/インターステラーと経験値と知名度がある役者を起用しがちだった傾向から一転したな〜と思った。フィン、ジャクロ、トムグリ、バリー、アナイリン、ハリーのプレスの時の何するのか分からず挙動不審だったのも含めカワイイがすぎるキャスト達…..
公開から結構な歳月が経っているけれど、プレスのインタビューは定期で見てしまうくらいに大好き。

”故国が見えるほど近いのに”というセリフがしんどいな。でも、3万人しか救えなかったかもしれない命が33万5000も救えたのは映画とか云々を越えて、一つの歴史として開いた口が塞がらない。そんなことも踏まえキャラクターの描写ってかなりダンケルクのキーポイントを抑えているのではないだろうか。何回見ても好きな作品。
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