ミラーズ

ダンケルクのミラーズのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
5.0
「IMAXは、ノーランのキャンバス」


初見は2017年にスウェーデンを旅行した時に、日本より早く上映していた現地の映画館で鑑賞して、それなりの好印象を受けていたが、普通な環境設備での鑑賞だったので、見逃していたIMAXレーザー版が、再公開されているので再見しました。

結論から先に言ってしまうと、「最高!」でした。(IMAX環境に限る)

それはフィルムに拘る映像作家クリストファー・ノーランの覚悟を感じたからである。

映像は全編に渡って素晴らしいが、特にラストのスピットファイヤの滑空が画面一杯に映される場面での映像の美しさは、映画史上に残る素晴らしさで最高!

戦争映画大作の定番だと複数のキャストと役柄のグランドホテル形式で描くのだが、登場人物の立ち位置を大まかに3組に分けて時間軸を交差させながら、同じシュチュエーションをそれぞれの目線で描く手法は、一見混乱し易いが、実はシンプルな反芻て成り立っている物語。

シンプルなのは、背景に現れていて、30万人規模の撤退作戦にしては、人や船や飛行機の数も明らかに少なくないが、緻密に配置してから画面構成をしているので、あまり気にならない。

以前からいわゆるCGやデジタル撮影に頼らないで、コントロールの難しいフィルム撮影にこだわってきたスタンスは、フィルム特有の色・質感などの再現性と独特の空気感スクリーンに映し出されている。

もちろん上映方式は、デジタルではなくデジタルデータに落とし込むのだが、IMAXレーザーの先鋭度に寄ってポジフィルムと遜色無い再現性があるのではと思う。

IMAX専用音響の強烈さも上々で、カチカチとアナログ時計の音で緊張感を煽る音楽と共に、銃弾や爆撃やか風切る航空機のエンジン音と臨場感が溢れ終始、緊張感を持続させる。

気になるところは、切り返しカットで特に人物の照明の光の方向や調子がチョイチョイと変わったり、色温度やカラーバランスに違いが見受けられる場面があるが、前者は、スケジュール都合によって生じるので仕方ないが、後者はプリントやデジタル変換時に補正可能だと思う。ただ監督のノーランはそれも含めてのフイルム撮影の特徴をスクリーンに刻みたいと思っているのかもしれない。

デジタル映画撮影についてのドキュメンタリー『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』でもノーランは、使える限りフイルム撮影に拘りたいと発言していた。逆に10才近く年上のデビッド・フィンチャーは、もうフイルム撮影に何もメリットがないと言っていたのとは対象的だった。

ともかく、今作はIMAX環境に限ると思うのは、映像と音響の効果が最大限に発揮できる環境を推奨している体感性の強い作品だから。
自宅でホームシアターを組んでも、映画館自体の広さも含めた物理的な理想空間は個人的では、とても再現が難しいと思う。