片腕ファルコン

ふたりの死刑囚の片腕ファルコンのレビュー・感想・評価

ふたりの死刑囚(2015年製作の映画)
3.2
『ヤクザと憲法』に引き続き東海テレビのドキュメンタリー。これまで9作品、劇場版にして「DVD化にする予定はない!」と明言したので、映画館に直行!まさか、出さない出さない詐欺じゃないでしょうね?

そんな事は良いとして、タイトル通り
袴田事件の袴田巌(79歳)
名張毒ぶどう酒事件の奥西勝(89歳)
2人の死刑囚を追ったドキュメンタリーです。

ちなみに袴田事件は新井浩文の『BOX 袴田事件 命とは』
名張毒ぶどう酒事件は仲代達矢の『約束 〜名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯〜』という劇映画にまでなっています。特に『約束』の方はかなり面白いです。主演した仲代達矢も舞台挨拶で「彼は無罪」と言っていたらしい。

今回のドキュメンタリーのナレーションも仲代達矢が担当。この死刑囚と同年代でもある彼の声は時折、死刑囚そのものであるかのように静かなる怒りに満ちた魂の叫びにも聞こえて胸を打ちました。

最近の事なのでご存知かと思いますので書いてしまいますと名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんの方は2012年から肺炎にかかり去年治療刑務所で死去。結局、再審請求が認められないまま死刑囚の状態で死ぬことなったわけです。。寝たきりの状態なのに身内の人ですら5分しか面会できないとは、なんて酷い話なんでしょう。

こうして老人になるまで引き伸ばして寿命を待つ事が狙いなんじゃないかと勘ぐってしまいます。

一方、袴田巌はエディ・マーサンに似ていて「―なんだなぁ」という口調が独特の死刑囚。48年も刑務所に入れれた後に検察官側のでっち上げ的な事が発覚し再審が認められ釈放されるも死刑囚特有の[拘禁反応]というもので精神に異常を来たしてしまって確かに会話が噛み合ってないシーンが何度もありました。宇宙と交信するシーンもあり心が痛いです。そんな彼も後半からだんだん笑顔を取り戻して周りに挨拶もしてくるのが印象的でした。

このように一度死刑が確定するとひっくり変える事はおろか再審すらも何十年も難しいものなだなぁと…裁判のあり方をまざまざと感じさせてくれる良いドキュメンタリーでした。

ちなみに袴田巌は元ボクサーで年間19試合した記録は未だに破られていないらしい!!スゴイ!!