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映画 聲の形のemilyのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
3.9
 ガキ大将だった石田将也は転校生の西宮硝子に興味を持つ。しかしその興味はやがて彼女を傷つけ、自分をも追い込むことになる。5年後高校生になった将也は硝子と再会する。心を閉ざし自分の世界に閉じこもったままの将也の行動が少しずつ自分を、そして周りを変えていく。

 いじめる側、いじめられる側。その方程式は簡単に翻る。そして自分を責め、自分の存在を否定する。アニメーションならではの繊細なイメージ像の交差で、それぞれの心情をマイナス部分だけでなく、言葉にできない苦悩がしっかり見えてくる。本作はあくまで将也の目線で綴られていく。会話の中に、言葉にしない物と言葉にする建て前があり、それにより生まれるお互いの誤解を映像と音楽にのせ、普遍的なテーマの中でしっかりと描かれている。

 いじめる側といじめられる側をしっかり体験してきた将也。うわべだけの友達は簡単に翻り、たった一人になった将也。しかしその辛さと罪悪感の中で過ごした日々は、人の痛みを知るには十分な時間だった。周りは5年経っても変わっていなくて、相変わらず自己防衛で相手を傷つけ、見て見ぬふりをする。将也の閉ざした心の扉を開くのは、やはり言葉である。人との関わりである。互いに思っていても、その気持ちは伝えなくては相手には伝わらない。言葉に出して、声に出して、どんな形であれ伝えなければ、その歪は埋まらないのだ。将也が一歩踏み出す時、自然と周りも変わっていく。伝えようとする気持ち、伝わらなくてもそれを懸命に行う気持ちが自分を変え、人を変える。

 人と人との繋がりの中に生まれる誤解や嫉妬などのあらゆる感情を渦巻ながら、それぞれの思いや苦悩がしっかり見えてくる作りになっており、言葉の大切さを改めて痛切させる、現代社会にマッチしたテーマになっている。大事な事は声にださないと伝わらない。顔と顔を合わせてぶつかってもわかり合えなくても、言葉をぶつけ合う事できっと人と人は理解しあえるのだ。